ランナーのために中国から特別輸入
北朝鮮の輸入バナナ価格高騰の記事を見て、「平壌マラソンでのバナナとガイドさんを思い出した」と連絡をもらったので話を聞かせてもらった。
2017年4月9日に開催された平壌マラソンを走ったという日本人ランナーからだ。
「世界中の市民マラソンを走ってきましたが、平壌マラソンは特に記憶に残る大会でした。今回のバナナの件で思い出したのは、レース中の給水所にペットボトルの水とバナナ1本があったことです。そのバナナが不自然なくらい真っ黄色で、ちょっとむきづらかったのですが、日本人なんで『こんなものか』と走りながら食べました」
フルマラソンは制限時間内に見事完走。担当ガイドと合流し、マラソンの感想を聞かれたので、給水所のことを話したという。
「斑点がまったくないバナナは、今まで見たことないくらいの真っ黄色で、未成熟だったのか、ちょっと硬くて食べづらかったですね。その話をガイドさんへ感想として話すと、ガイドさんはちょっと寂しそうな顔をしながら、今回のバナナはランナーの皆さんために特別に中国から輸入されたものなんですよ。共和国(北朝鮮)の人間はバナナをめったに食べられないんです」
成熟したバナナを知らないガイド
話した瞬間、「しまった」と思ったそうだが、おそらくガイドも数えるほどしかバナナを食べたことないがないのだろう。完熟したバナナというイメージを持っていないと感じたそうだ。
北朝鮮ではバナナの生産量はゼロ。韓国では済州島で少し生産されているようだが、韓国で食べられるバナナもほとんどが輸入品だ。
この平壌マラソンでランナーへ提供されたバナナは、未成熟の青い状態で輸入されて、大会に合わせて人工的に成熟させたのだと思われる。皮に斑点がないとのことなので、成熟前だったと思われる。
国連制裁前であれば、北朝鮮はタイや台湾とも貿易を行っていたので、バナナも輸入していた可能性もあるが、2017年当時は、ほぼすべての果物が中国から輸入されたものとなっていた。
ガイドへの土産にバナナ
ガイドへの土産にバナナ
今後、北朝鮮旅行でガイドへの土産にバナナを持っていくと喜ばれるかもしれない。しかし、バナナそのものを持ち込むことは、北朝鮮でも原則できない。そうすると、未成熟の青いものとなるが、中国の立ち寄れる市場では、さすがに青いバナナは売っていないので、代わりにバナナチップやバナナジュースなどバナナを使った食品をプレゼントしたらどうだろうか。
「北朝鮮へは往復国際列車で行きましたが、乗り合わせた中国人乗客は、みんなバナナやリンゴなど果物を大量に持ち込んで車内でムシャムシャ食べていたので、普通に持ち込めると思います(笑)」(前出の日本人ランナー)