38度線非武装地帯を世界遺産に登録申請
38度線非武装地帯を世界遺産に登録申請
青森県の三内丸山古墳など17の遺跡で構成される「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、今年7月に開催される世界遺産委員会で、ユネスコ世界文化遺産に登録される見通しだという。世界遺産になれば、観光資源としての価値は高まる。それだけに韓国や北朝鮮でも、近年は世界遺産指定を狙った積極的な動きが見られるようになっている。
韓国では1995年に慶州市の「石窟庵と仏国寺」が初の世界遺産となって以来、現在では国内の世界遺産は14件にまで増えた。しかし、日本の世界遺産は23件と数の上では引き離されている。
今年は全羅南道宝城郡の干潟を「韓国の干潟」として、今年度の世界自然遺産への登録を推進したが、世界遺産としての条件がそろわず登録延期となってしまった。一方、日本は三内丸山古墳など2件の世界遺産登録が決定しており、さらに差が開いてしまう。
何事にも日本をライバル視するお国柄だけに、韓国政府も焦っているようだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権になってからは38度線の非武装地帯を「国際平和地帯」として世界遺産登録を目指すなど、新たな世界遺産候補の発掘に熱中している。少しムキになっているのだろうか。
革命の聖地・白頭山が世界ジオパークになるか?
一方、北朝鮮の世界遺産は「高句麗古墳群」と「開城の歴史的建造物群と遺跡群」の2件だけ。日本や韓国に大きく水をあけられた状況だ。最近は遅ればせながら、国内文化財の世界遺産登録を狙って積極的な動きが見られるようになり、登録の前段階である暫定リストに5件を記載させる成果を得ている。
また、中朝国境にある朝鮮半島最高峰の白頭山(標高2744メートル)のユネスコ世界ジオパーク登録を推進しているというニュースが、昨年5月に朝鮮中央通信より報じられた。白頭山は古代朝鮮国が起こったとされる朝鮮民族の聖地。故金日成(キム・イルソン)主席が指揮する抗日ゲリラの根拠地にもなったことで、北朝鮮ではさらに神聖視される山である。
止まる登録への動き
2018年に韓国の文在寅大統領が訪朝した際には、金正恩(キム・ジョンウン)総書記とともに山頂で記念写真を撮り、韓国メディアもこれを大々的に報道した。大統領はこのときに「韓国の一般市民も白頭山を観光する時代が来ると信じる」と語っていたのだが、当時の蜜月ムードが嘘のように、今では北朝鮮が態度を硬化させている。
白頭山の世界ジオパーク登録に関しても、その後は北朝鮮に目立った動きが見られない。コロナ過で外国人観光客を呼び込めない状況。世界ジオパークに登録されても、目当ての外貨が得られないとなれば…熱意もすっかり冷めてしまったか。
ちなみに、日本は9地域が世界ジゴパークに認定されている。韓国は4地域、北朝鮮は認定地域なしとなっている。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)などがある。