文革を追体験できる北朝鮮
文革を追体験できる北朝鮮
「私が幼かった70年代前半の光景を見ているようだ」
という内容で中国のSNSへ毛沢東が主導した文化大革命(1966年~1976年)当時の毛沢東語録の巨大ポスター、知識人が強制移住させられた農村、紅衛兵がトラックに乗って移動する都市、毛沢東バッジを胸元へつける人民服の女性などのカラーとモノクロ写真8、9枚ほどと一緒に投稿されていた。
写真は投稿者自身が所有しているものかは不明だが、「このとき私が体験した光景と北朝鮮はそっくりだ。私が北朝鮮観光をしてみたいと思ったのは私の幼いときの時代を追体験したいと思ったからだ」と書かれていた。
興味深いので投稿をスクリーンショットで保存しようとブックマークをしていたが翌日には削除されたか投稿は見つからなくなった。中国当局に削除されたのだろうか…。
タブー化した文革体験を語る人は少ない
投稿者は中国政府を批判したわけでも中国共産党を否定したわけでもない。「70年代初頭の中国と北朝鮮はそっくりだ」と写真を添えて投稿していただけだ。
中国の歴史の教科書でも文化大革命は登場するがページはかなり少なく、実際に文革を体験した人たちの口は一様に重い。中国国内では生の声はなかなか聞くことができない。
都内在住の50代前半の元中国人女性Yさんは文化大革命の被害者の1人だ。父親が教師で、母親が内科医だったため一家全員農村へ移住させられてYさん曰く原始人のようなとんでもない生活をさせられたという。文革終結後に住んでいた都市へ戻ってきたら今度は学校でいじめにあって中国共産党が嫌いになり、日本へ留学後、迷うことなく帰化した。
「中国政府はあんな無茶苦茶なことをやった反省も総括もいまだにする気もないし、自分の権力復権のために主導した毛沢東を建国の父として尊敬しろなんてありえない」(Yさん)
いまだに中国では文化大革命を議論にすること自体がタブーな雰囲気に包まれ毛沢東の偉大な功績であるかのように数えられている。
豊かになった中国を実感
豊かになった中国を実感
実は確認できなくなったSNSの投稿者のようにノスタルジーに浸るために北朝鮮ツアーへ参加する中国人は少なくない。
中国の旅行会社から10歳の孫を連れて北朝鮮への団体旅行に参加したという中国人男性に話を聞くと、「自分が若いときに見たであろう光景を孫へ見せたかった」と語っていた。
続けて、実際に北朝鮮へ行ってみた感想を尋ねると、男性は少し間をおいて、「中国は豊かになったと改めて実感した」と話していた。
中国政府は北朝鮮と文化大革命のカラー写真を比較するような投稿から文革や毛沢東批判が起こり、毛沢東とともに現在の中国の憲法前文にも登場する習近平国家主席への批判へと飛び火することを警戒したのかもしれない。