北朝鮮の「食糧危機」は非常に深刻な問題だ。「国連WFP(世界食糧計画)」の食料安全保障分析上級アドバイザーで現地調査の共同リーダーであるニコラ・ビドー氏は、「多くの家庭が1年の大半を米とキムチで過ごしており、タンパク質が不足している」とコメントしている。
ここで気になるのが、食糧危機の問題をクリアしたとき、北朝鮮の人々はどんな料理を好んで食べるのかということだ。そこで今回は北朝鮮で愛されている5つの料理を厳選して紹介したい。
知名度No.1。定番の名物料理「平壌冷麺」
知名度No.1。定番の名物料理「平壌冷麺」
日本でも焼肉店や韓国料理店などで食べることができる「冷麺」のルーツは北朝鮮にある。平壌冷麺はそば粉が入っているので麺の色が少し黒いのが特徴だ。牛肉、卵、キムチなどを盛りつけるのが現地では一般的だ。牛肉と白菜漬けの汁をミックスさせているのでスープはやや黄色い。
現地のお手軽料理「ピンデトッ」
現地のお手軽料理「ピンデトッ」
韓国料理の「チヂミ」に似た料理。豚肉、モヤシ、白菜キムチ、ワラビを混ぜてフライパンで焼き上げる。北朝鮮レストランではお好み焼きと和訳されることもある。ちなみに名前の「ピンデ」は「南京虫」、「トッ」は「餅」という意味だ。韓国でも居酒屋や屋台などで気軽に食べられる料理なので、機会があれば食べてみてはどうだろうか。
高熱で一気に焼き上げる「焼きハマグリ」“ハマガソ”
観光客に人気の焼きハマグリ。ガソリンで一気に焼き上げるため、旨味を逃さないので驚くほど美味しいのだとか。訪朝者の間では、ハマグリのガソリン焼き、通称“ハマガソ”の愛称でも知られる。ガソリンを使用した大胆な調理方法だが、現在はガスバーナーで調理する現地人も少なくないらしい。
シルクロードから伝わった「マンドゥ」
シルクロードから伝わった「マンドゥ」
韓国でも一般的に食べられているマンドゥ。シルクロードを通って朝鮮半島に伝えられたという説が強い。豆腐、キムチ、ひき肉、などの具材が使われており、見た目は餃子そのもの。焼いても蒸しても美味いが、スープに入ったマンドゥを好む観光客は多い。
北朝鮮のソーセージ「スンデ」
北朝鮮のソーセージ「スンデ」
豚の腸に香味野菜、餅米、デンプンで作った麺を入れて蒸すソーセージのような料理。現地では塩と胡椒でシンプルに食べるのが一般的だ。北朝鮮の屋台で食べられるスンデは臭みがなくて食べやすいのだとか。
国連WFPの調査によると、北朝鮮における2018年から2019年の農作物の収穫量は490万トンと推計され、これは2008年から2009年以来の低さだ。報告書では、非常に少ない食料消費量に懸念を示し、多様な食事をとることが困難になり、家庭内で食事の回数や量を減らすことを余儀なくされている。一刻も早く北朝鮮の食糧不足が解消されることを願う。
井上 一希
フリー編集者。マガジンハウス「anan」、宝島社「sweet」、読売新聞ライフスタイルページの編集担当。好きな食べ物は「冷麺」。