社会主義国で海なし国のラオス
東南アジア観光で日本人になじみがあるのは、タイやベトナム、マレーシア、シンガポールではないだろうか。
基本的には直行便があることで便利に早く行けることが最低条件になる。
そうなると、直行便がない国は敬遠されがちだ。その1つにあるのが、タイと国境を接しているラオスだ。
ラオスは社会主義国で、海がないという点で東南アジアでは珍しい国になる。そのため、際立った産業がなく、世界的に見ても貧しい国だ。
日本外務省が毎年集計している海外在留邦人者数統計でも、タイは令和3年度で8万2574人の日本人がタイ国内在住に対して、ラオスは789人しかいない。
とはいっても、経済的に貧しいだけで、国民性は穏やかだし、自然の観光スポットも少なくないので、知る人ぞ知る国ではあるが、魅力のある観光地でもある。
ラオス入国者479万人(2019年)
残念ながら日本から直行便がない。
日本とラオスを行き来する場合、ベトナムのハノイ、タイのバンコク、あるいは中国などの直行便があるところを経由する必要がある。
長期休暇が取れない人にとっては、移動時間が大きなネックになることは間違いない。
一方、韓国はラオスに向けて直行便がある。
近々の統計が出ないので、具体的な韓国人の入国者数はわからないが、2019年時点で479万人いた外国人観光客のラオス入国の中で、少なくとも日本人よりは多かったとみられる。
ちなみに、同年度のタイへの外国人入国はおよそ3980万人で、中国人だけでも1100万人ほどになるため、ラオス入国者はあまり多くはない。
タイとラオス=韓国と北朝鮮?
韓国人にとっては、直行便があるので往来の利便性が高いことはもちろん、文化的な背景が似ている部分があっての興味もあるのかもしれない。
さらに、タイは資本主義であり、ラオスが社会主義であることから、韓国と北朝鮮の関係に似た何かを感じるのではないか。
実際、タイ人の中年男性がラオスを訪れると昔のタイの面影を感じるという。
また、一時期、東南アジアで流行した北朝鮮レストランも日本人を除くと大半が韓国人男性客で、歌謡ショーなどを行う女性や店員に韓国人女性に少なくなった素朴な魅力を見出していたという。そのあたりに同じような感覚があるのかもしれない。
直行便は強みだが、大勢で騒ぐ中年男性は嫌われる
ラオスに来る韓国人観光客の多くが男性の団体旅行客だとされる。
物価もタイと比較しても安いので、低予算で海外旅行を楽しめるのもラオスの魅力の1つではある。
しかし、逆に言うと、自分が金持ちになったような気分になってしまい、中には傍若無人に振る舞う韓国人男性も少なくないようだ。
特に複数人で集まると強気になってしまい、飲食店などで大声を出したり、店員に無理を言うことがよくあるという。
新型コロナウイルスの悪影響で観光客が激減し、また、ラオス通貨の悲劇的な暴落の最中にある今、外国人観光客の受け入れは必須。
ラオス・韓国間のフライトは、ほぼ満席状態ではあるが、その状況とは裏腹にラオス人の飲食店や観光業者には評判が良くない。
まるでお互いにうまくいっていないカップルのような状態に陥っているようである。
高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)