弾道ミサイル3基搭載できる新型潜水艦か?
北朝鮮は弾道ミサイルを搭載できる潜水艦の開発に着手し、3000トン級の潜水艦建造をほぼ終えて進水も間近だとか。すでにほぼ完成した艦体の写真も公開されている。北朝鮮は2015年に水中発射できる弾道ミサイル「北極星1号」の開発にも成功したという。
発射実験に使われたとされる潜水艦は、90年代にロシアから購入したゴルフ級潜水艦を改造したもので、北朝鮮では「コレ級潜水艦」として運用している。排水量は1500トン程度、弾道ミサイル1基を搭載していると推測される。しかし、こちらはあくまで実験用、実際に洋上で運用するのは難しいと考える軍事専門家も多い。
開発中の3000トン級の新型潜水艦は、弾道ミサイルのプラットフォームとしての本格運用を目的としたもので、3基程度の弾道ミサイルが搭載可能だという。しかし、北朝鮮の技術力でそれが本当に可能だろうか。
北朝鮮は世界有数の潜水艦大国。だがその技術力は…
朝鮮人民軍海軍は、潜水艦70隻以上を保有する世界有数の「潜水艦大国」ではあるのだが、外洋で長期間の行動が可能な1000トンを越える潜水艦は、外国から輸入した中古潜水艦に依存している状況。主力のロメオ級はロシアで1950年代後半に開発されたもので、現在ではかなり旧式の部類になる。
北朝鮮が独自開発したサンオ級は排水量277トン、ヨノ級は120トン余り。他国では潜水艇と呼ばれるサイズであり、航続距離は短く外洋で活動するのは難しい。工作員を潜入させる目的で建造されたもので、1996年には韓国の江原道沿岸で座礁し、帰国手段を失った工作員が上陸して韓国軍や警察と銃撃戦の末に集団自決する事件を起こしている。この時に使用された潜水艦もサンオ級だった。
韓国でも3000トン級新鋭潜水艦が間もなく就役
韓国でも3000トン級新鋭潜水艦が間もなく就役
一方、韓国の潜水艦建造技術はどうだろうか。最新鋭潜水艦「島山安昌浩」は今年8月に就役を予定している。排水量3300トンは、北朝鮮が建造中の新型潜水艦とほぼ同サイズ。連続運転試験では、ディーゼル推進の通常型潜水艦としては世界最長長期運転に成功したと自画自賛しているが…。
これまでの韓国海軍が保有する潜水艦は、すべてドイツで開発された潜水艦の輸入やそのライセンス生産。現在の主力潜水艦である孫元一級も、ドイツの輸出用潜水艦214型を韓国内の造船所で建造したもので、推進システムや大半の機器はドイツの技術に依存している。
しかし、技術水準に劣る韓国主導の建造では、予定した性能に達することができず、潜水艦としては致命的なスクリューの騒音問題も発生。また、故障が頻発して運用率はかなり低下していとも聞くのだが。
ドイツからの技術支援やサポートを受けながらも、問題だらけの状況。それを独自開発で、これまで経験したことのないサイズの潜水艦を建造したのだ。大丈夫だろうか。
南北朝鮮の最新鋭3000トン級潜水艦は間もなく就役することになるが、果たして海上自衛隊の驚異となりうる水準に達しているのか。その性能評価が待たれるところだ。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)などがある。
『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社)2021年8月30日発売予定。