日本政府が外国人株主規制を検討

日本政府が外国人株主規制を検討

日本の技術流出防止措置に反発する韓国

 6月23日の読売新聞の記事によれば、日本政府は安全保障と関連した技術流出を防止するため、外国人株主の株主権に制限を設けることを検討しているという。韓国でもこれが報じられて注目が集まっているようだ。

 昨年にも外為法(外国為替及び外国貿易法)が強化され、外国人が安全関連の上場企業株式の1%以上を取得する場合は、政府の事前承認が必要になっている。今回はさらに外国人が保有する株主権にも制限を加えて、外国人株主が日本企業の技術流出につながる要求をしてきた場合、日本政府がこれを阻止することができるようにするものだ。

 「外国人投資家の反発が予想される」と、韓国紙は報じているのだが、反発が予想されるのは、おそらく1か国だけ。そもそも日本政府が外国人株主規制を急ぐのも、韓国を強く意識してのことだろう。

過去にも多くの先端技術が盗まれている

過去にも多くの先端技術が盗まれている

新日鉄へ特許権侵害で和解金2990億ウォンを支払ったポスコの本社 出典 posco [Public domain], via Wikimedia Commons

過去にも多くの先端技術が盗まれている

 日本がフッ化水素やフォトレジストなど半導体素材の輸出管理を強化したことで、危機感を覚えた韓国は、半導体素材の国産化を推し進めている。韓国政府も研究開発費を支援するなど、官民総力を挙げての努力が続く。

 が、見通しは明るくない。日本企業が長い年月をかけて確立した技術だけに、短期間でこれと同レベルの製品を作るのは難しい…。それを可能にする手段は1つだけ。「盗む」ことしかない。韓国にはその前科も多々ある。

 たとえば、新日鉄が昭和40年代に開発した方向性電磁鋼板だ。一方向に磁化する特性を持つことから、変圧器やモーターの鉄芯には欠かせない。世界で新日鉄だけが生産できる付加価値の高い鋼材だった。

 韓国の製鉄会社ポスコはその製法を盗むために、新日鉄の退職者をスカウトして再雇用した。元社員は多額の報酬に目がくらみ、新日鉄との秘密保持契約を無視して門外不出の技術情報を渡してしまう。

 のちにこの事実が発覚し、新日鉄は特許権侵害で提訴。ポスコ側は2990億ウォン(約261億円)の和解金を支払うことになった。

「国産化宣言」に高まる日本側の警戒感

 半導体についても、これまで韓国は日本から多くの技術情報を不正に入手している。バブル景気後の不況下、収入の激減した日本メーカーの技術者を韓国企業が次々にヘッドハンティングした。方向性電磁鋼板の時と同様に守秘義務は無視され、多くの先端技術が韓国企業の手に渡っている。

 また、ごく最近の2014年でも、東芝のNANDフラッシュメモリに関する研究データが韓国企業に不正流出し、元技術者らが逮捕される事件が起きている。

 そんな歴史があるだけに、韓国が半導体素材の国産化宣言などすれば、

 「また、日本から盗む気か?」

 日本政府や素材関連企業が警戒感を顕にするのは当然だろう。今回の技術流出を防ぐことを目的とした外国人株主権制限に対して、韓国側が強く反発すればするほど、

 「やっぱり、盗む気だったのだな」

 と、さらに疑念が深まってくる。新日鉄や東芝の轍(てつ)を踏まないためにも、日本の先端技術を守るための法整備が急がれるところだ。
 

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)などがある。

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