いまだ新型コロナワクチンを入手できていない
韓国の国家情報院系シンクタンク・国家安保戦略研究所は、9日の記者会見で現在の北朝鮮情勢についての分析を発表した。
北朝鮮は現時点で新型コロナウイルスのワクチンを入手できておらず、今年2月3日にワクチンの共同購入・分配の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」が発表した英アストラゼネカ製のワクチンも受け取っていないだろうとの見方を示した。
北朝鮮は遅くても5月末までにアストラゼネカ製のワクチン170万回分を受け取る予定だった。しかし、接種状況の監視受け入れに北朝鮮側が難色を示し合意に至っていないと報じられた。これに対して同研究所は、北朝鮮がアストラゼネカ製のワクチンの副反応に懸念を示し、受け入れを拒否しているとの見解を示す。さらに中国製のワクチンは不信感から導入をためらっているという。
ファイザーやモデルナへ交換交渉中?
現在、北朝鮮はCOVAXに対してアストラゼネカではなく、米ファイザーや米モデルなどの別のワクチンへ交換できないか交渉しているが、ワクチンの保管環境が課題となっているようだ。同時に北朝鮮は、ロシア製のワクチンへ肯定的な評価をしていて無償提供をロシアに対して希望しているようだとも発表している。
昨年12月、中国政府が北朝鮮向けにまだ未完成の中国製ワクチンを少量提供し、金正恩(キム・ジョンウン)総書記と家族、朝鮮労働党の幹部はすでに接種済みのようだと米シンクタンク経由で報じられていた。
北朝鮮は貿易、経済面で中国へ大きく依存しているので、日本では中国の傀儡(かいらい)国家ように報じられることも多い。しかし、北朝鮮は建国以来一貫して中国への根強い警戒心を持ち続けている。“中国の夢”とは、北朝鮮を経済的、領土的に飲み込む野心を含んでいるからだ。
「中国をまったく信用していない」
「中国をまったく信用していない」
北朝鮮が国境を接する中国・遼寧省と吉林省の新型コロナウイルスの感染状況は、抑え込んでいると中国政府は盛んに発表しているが、これもまったく信用していないのではないかという話もある。
「(北)朝鮮は中国側の発表を鵜呑みにせず、疑っているのでしょう。それが防疫を緩めず、人の往来を認めない理由だと思います。2009年の新型インフルエンザ、14年12月のエボラ出血熱の時も中国側でまったく流行していないにもかかわらず、朝鮮は国境を封鎖し、往来を制限しました。中国では朝鮮は医療体制が脆弱だからと報じられていましたが、中国政府の発表を『自分たちを陥れるための策謀』と疑っているのだと思います」(中国朝鮮族関係筋)
今回の北朝鮮がCOVAXからのアストラゼネカを拒否の報道は、中国のSNSでも投稿されて、北朝鮮の判断を称賛するコメントが多数見られる。しかし、重要な後半部分、つまり、中国製ワクチンへ不信感を持っているの部分はどの投稿も都合よくカットされている。もし、これも伝えたら中国のネット民は、どんな反応を示すだろうか。