7月8日頃に梅雨戦線北上で梅雨入りか

7月8日頃に梅雨戦線北上で梅雨入りか

台風9号の被災地で政務局拡大会議を招集した金正恩氏。2020年9月6日付の労働新聞より(提供 コリアメディア)

 韓国の気象庁は7月2日頃に済州道から梅雨入りする見通しであることを6月28日に発表した。例年に比べて約2週間遅く、7月に梅雨入りするのは39年ぶりとなる。

 韓国に続いて梅雨入りすることになる北朝鮮でも梅雨前線への警戒を強めている。6月30日付の党機関紙・労働新聞は「現在、梅雨戦線は7月8日頃に北緯38度付近まで北上し、この頃から梅雨期に入って大部分の地域で初の長雨が降ることが予想される」と伝えている。その上で、「すべての部門と地域、単位で近づく長雨に対処して、いささかの被害も発生しないように予見性ある対策を講じるべき」と警戒を強めた。

 政府機関紙・民主朝鮮も同日、「咸鏡南道人民委員会は大水被害を防ぐための活動に取り掛かっている」とする論評を掲載。「長雨期大水被害」を防ぐためにダムや堤防、橋の整備が進められていると伝えた。

 このように北朝鮮は梅雨期おける豪雨被害を防ぐため万全の体制を整えているようだ。

3度の台風直撃などで水害被害が相次いだ2020年

 北朝鮮が警戒しているのは昨年(2020年)の水害被害の再来だ。

 北朝鮮では昨年7月中旬頃から1か月近く梅雨が続いており、少なくとも7月23日と8月1日の2回、記録的豪雨に見舞われていることが北朝鮮メディアの報道でわかっている。このときは穀倉地帯である黄海北道と黄海南道などでの被害が報告されており、食糧事情に大きく影響したと考えられる。

 その後被災地を復旧する間もなく、8月下旬から9月上旬にかけて台風8号、9号、10号が朝鮮半島を連続して直撃。約2週間で3個の台風が上陸したことで、復旧中であった黄海北道や黄海南道をはじめ北朝鮮各地で水害被害が生じることとなった。

 これらの豪雨被害は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が指導者に就任した2011年以降、最悪の被害だったという見方もある。

 2週間前に開催された党中央委員会第8期第3回全員会議(6月15日)においても、金正恩総書記は「昨年の台風被害」のために食糧事情が逼迫していると言及しており、水害の影響が今でも続いていることがわかる。

 北朝鮮では2006年、07年、16年などにも大きな水害被害が生じているが、いずれも単発の台風などによる被害であった。昨年のように連続して台風や集中豪雨に見舞われることは過去にもほとんど例がなかったのである。

特に被害が大きかった台風9号。金正恩氏が水害対策を指示

 特に9月2日から3日にかけて北朝鮮に豪雨をもたらした台風9号の影響は甚大であった。この台風により韓国でも大きな被害が出ている。

 北朝鮮メディアによると、台風9号により咸鏡北道沿岸の1千世帯以上の住宅が破壊され、多くの農耕地が浸水したとされている。

 この非常事態に対し、金正恩総書記は9月5日、被災した咸鏡北道と咸鏡南道の復旧のために党中央委員会政務局拡大会議を現地で招集した。被災した地方地域で党幹部を集めて会議を行うのは、極めて異例な措置である。

 この会議で金正恩総書記は「現在わが国の全般的な海岸沿線地帯の安全対策が不備で、海岸防潮堤がまともに建設されていない」と述べ、被災地復旧と合わせて水害対策を講じるよう指示を出している。

 その後、治水工事などを進めてきたものと考えられるが、この10か月間でどの程度整備が完了しているかは不明である。

 金正恩総書記は「食糧事情の回復」と「人民生活の安定」を掲げており、北朝鮮当局は7月の梅雨入りに向けて警戒をいっそう強めていくものとみられる。
 

八島 有佑
@yashiima

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