韓国政府「東京オリンピック不参加は検討せず」
韓国政府「東京オリンピック不参加は検討せず」
韓国の崔泳杉(チェ・ヨンサム)外交部報道官は6月8日、東京オリンピック公式サイト内地図の竹島(韓国名・独島)表記問題に関連して、「政府としてはオリンピック不参加を検討していない」と明らかにした。その上で、「政府の原則的な立場としては、独島は明白な韓国の領土」と改めて強調している。
竹島表記問題を巡り、韓国では前首相の丁世均(チョン・セギュン)氏や最大与党である共に民主党前代表の李洛淵(イ・ナギョン)氏が「東京オリンピックボイコット」に言及するなど問題化していた。
すでに新型コロナ流行を理由に不参加を表明している北朝鮮も、竹島表記を「親善と団結を象徴する神聖なオリンピック競技大会を領土強奪の野望の実現に利用しようとしている」(4日朝鮮中央通信)と非難を寄せていた。
韓国政府としてはボイコットの意思はないことを示しつつも、日本への要求は続ける見込みだ。
一方、日本政府は地図修正を強く拒否しており、同問題における日韓の対立は続いている。ちなみに、2019年にも東京オリンピック公式サイト内の別の日本地図に竹島が表記されており、その際も韓国側から抗議が出ていたが日本側は修正に応じていなかった。
竹島表記問題の発端となった徐敬徳教授のSNS投稿
竹島表記問題の発端となった徐敬徳教授のSNS投稿
さて、今回騒動の発端となったのは韓国の誠信女子大学教授である徐敬徳(ソ・ギョンドク)氏のSNSである。
徐氏は5月20日、「地図を拡大すると独島(竹島)が日本領土のように表記されていることを発見した。IOCに表記訂正を求めるようメールした」と投稿した。
現在も東京2020オリンピック競技大会公式ウェブサイトの聖火リレー地図を拡大すると竹島の位置と重なる場所に小さい点が確認できるが、領土問題をめぐる日本政府の不当な主張と非難したのだ。
SNS投稿翌日には聯合ニュースなど韓国メディアが徐氏の発言を取り上げ、韓国与党政治家が呼応した形だ。
米紙へ自費で日本批判の記事広告を掲載
徐敬徳氏は誠信女子大学教育学部で教授を務め、研究分野は「国家広報」となっている。
徐氏は以前から日韓間の様々な問題を提起してきた。2005年には米紙・ニューヨークタイムズとウォール・ストリートジャーナルに「独島は韓国の土地」「東海は韓国海」と記した広告を自費で掲載したことで話題を呼んだ。
それ以降も徐氏は慰安婦問題や徴用公問題、竹島問題など日韓間の懸案事項に関して日本への批判を重ねてきた。SNSを積極的に活用して宣伝しており、その発言は韓国メディアにもたびたび取り上げられている。
今年に入ってからは3月に自身のユーチューブで「東京オリンピックでの旭日旗応援阻止」を訴え、「旭日旗はナチスドイツのハーケンクロイツと同様の戦犯旗」と主張して日本から反発が起こった。4月には旭日旗を連想させるジャケットを着用したとして米国の人気歌手であるジャスティン・ビーバーや所属事務所に抗議のメールを送ったことも明らかにしている。
日韓間の懸案事項で韓国側の主張をけん引
また、日本政府が福島第1原発処理水の海洋放出を決定したことにも強く非難。麻生太郎副首相が「福島の処理水は飲める」と発言したことに対して、5月に「それが本当ならばまずお手本を見せてもらいたい。そんな勇気もないくせにこのような妄言を発するのは海外諸国の人々に対して失礼」と指摘。麻生副首相が処理水を飲んでいるかのような画像をSNSに投稿したことで物議を醸した。
このように徐氏はこれまで日韓間の様々な懸案問題を取り上げ、韓国側の主張をけん引してきた。
インスタグラムのフォロワー数は約9.6万人(6月10日現在)とSNS上での影響力も大きい。今後も様々な場面で議論を巻き起こし、日本政府としても対応を迫られることになるだろう。
八島 有佑