30代候補が予備選や世論調査でトップ独走
30代候補が予備選や世論調査でトップ独走
6月11日に行われる韓国の保守系野党「国民の力」の代表選で、36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)氏に注目が集まっている。
李氏は5月28日の予備選で他のベテラン候補を押しのけて1位で通過した。同党の支持層を対象にした各種世論調査でも、李氏はトップを維持している。世論調査会社のアールアンドサーチが6月4日に発表した調査結果では、李俊錫氏は支持率46.7%。同調査の支持率2位で、予備選でも2位であった羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)氏は16.8%となっており、大きく引き離した。
40歳未満は大統領選の被選挙権がないため李氏自身は大統領候補にはなれないが、主要与党として前例のない30代の党代表が誕生すれば来年3月に行われる大統領選の行方にも影響を与えるとみられる。
今年4月のソウル市長選では野党候補が大勝したが、これは文在寅(ムン・ジェイン)大統領を支持してきた20、30代の層が野党に流れた結果と評されている。
国政経験はないが高い知名度
李氏は1985年生まれのソウル出身。米ハーバード大(経済・コンピューター学士)を卒業後、IT系のベンチャー企業「学びを分かち合う人々」を立ち上げた。
2011年に当時のセヌリ党(国民の力の前身)トップであった朴槿恵(パク・クネ)前大統領に抜擢されて政界入りし、党再建チームに加わった。その後、朴槿恵弾劾事件に際して離党したが、2020年に復党している。
実はこれまでに国政選挙に3回出馬するもすべて落選して国会議員経験はないが、 SNSを積極的に活用して情報発信しており、韓国内で高い知名度を誇っている。
ちなみに李氏は、次期大統領候補への意欲を示している劉承旼(ユ・スンミン)氏のグループに属するという見方もある。李候補の父親と劉承旼氏の間に親交があるとのことだ。
保守系・革新系ともに李俊錫候補の善戦を評価
韓国メディアは保守系も革新系も李俊錫氏についておおむね好意的に報じている。
保守系の朝鮮日報(5月25日付)は、若い世代の新人候補が活躍していることは「保守政党に対する国民の期待と要求の反映」と支持した。同じく保守系の中央日報(5月28日付)も、「国民の力は『若い力』を派閥争いで台なしにするのか」と題する社説を掲載。派閥争いで李氏の善戦に水を差すべきではなく、政界における青年層の活躍に期待感を示した。
一方、革新系のハンギョレ新聞では(5月29日付)、李氏の善戦を「李俊錫突風」と表現し、背景には「既存政治脱却への熱望がある」と分析。最大与党である共に民主党も既存政治にしがみつくべきではなく、李俊錫突風を人事と考えて甘く見ていると大きな危機に陥ることになると警告した。
このように韓国メディアは李俊錫氏の躍進を「政界の世代交代」と評し、好意的に扱っている。
国民の力の党内で世代対立が激化
一方で、世論調査でもトップ独走を許している他の党内ベテランたちは、李俊錫氏を警戒。予備選2位であった劉承旼氏は、李氏に政治の経験と実績が不足しているとして、「政権交代のためには安定したリーダーシップが必要」と指摘。3位であった朱豪英(チュ・ホヨン)氏も、「特定の大統領候補(劉承旼氏)と親交がある者を党代表とすべきではない」と李氏へのけん制を続けている。党内の世代交代を巡り対立が激化している状況だ。
予備選では党員投票と一般世論調査を1対1の割合で合算する方式だったのに対し、6月11日の代表選では党員投票70%、世論調査30%を合算して新代表を選出する。本選では党員投票の割合が増加することになるが、依然として李氏が優勢という見方が強い。
30代の党代表が誕生するのか注目が寄せられる。
八島 有佑