6月上旬に第8期第3回全員会議の召集を決定
金正恩(キム・ジョンウン)総書記は6月4日、党中央委員会第8期第1回政治局会議を招集した。党機関紙・労働新聞が5日に伝えている。
金正恩総書記は5月7日に軍人家族の芸術所組員による記念公演を鑑賞して以降動静が報じられていなかったところ、1か月ぶりの公開活動となった。
金正恩総書記は会議の中で「現在の内外の情勢の下で党と政府が重大な使命と責任を負って努力の限りを尽くさなければならない」と述べ、経済活動と人民生活向上に向けて決意を語ったとのことである。
そのほか会議では今月(6月)上旬に党中央委員会第8期第3回全員会議(総会)を招集することを決定し、また党中央委員会における部署機関の再編問題も討議したと報じられている。
米韓首脳会談(5月21日)で両首脳が対北対話の意思を示したことに対する北朝鮮側の反応に注目が寄せられているが、今回の会議報道では言及がなかった。5月31日に国際問題専門家のキム・ミョンチョル氏名義でミサイル制限撤廃を非難する談話を発表しているが、党や政府機関レベルでの声明などはまだ出されていない。
過去にも重要な対外方針が決定してきた全員会議
さて、今月上旬に開催されることになった党中央委員会全員会議で何らかの重大決定がなされる可能性がある。
党中央委員会は、朝鮮労働党の最高機関である党大会の役割を代行する機能を持つ。今回会議を開催した政治局も党中央委員会の内部にある機関の1つである。加えて、委員会メンバー全員が出席する党中央委員会全員会議は、国内外の問題を討議、議決する重要な会議である。
たとえば2018年4月の党中央委員会第7期第3回全員会議では大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験や核実験の中止を決定しており、現在もその決定を貫いている。
2019年12月の第7期第5回全員会議では米朝交渉の停滞を受け、「制裁に打ち勝つための正面突破戦の基本戦線は経済分野にある」と規定しており、現在もその方針に基づいて経済建設を進めている。
このように過去にも党中央委員会全員会議では重要な対外方針を決定しており、北朝鮮の対外方針を知るための機会となっている。
6月中に対外メッセージが出される可能性も
ただ、労働新聞の報道によると、今月開催される第8期第3回全員会議の招集理由は、「当面の2021年度における主要な党・国家政策の執行実態を中間総括し、強力かつ正確に推し進めるうえでの一連の問題を討議、決定するため」となっている。主要課題は経済問題や人事問題であり、対外問題については触れられていない。
今年2月の第8期第2回全員会議でも新しい「国家経済発展5か年計画」に関する討議が主であった。
北朝鮮側は、米国が具体的な行動に出るまでは譲歩しないという方針を堅持しており、国連制裁下での経済建設に舵を取っている状況だ。米韓首脳が対話を表明しても行動がともなわない限りは取り合わないだろう。議題としてあがらないのも「わざわざ対外問題として会議で討議する必要もない」という姿勢の表れと捉えることもできる。
一方で、今月でシンガポールでの米朝首脳会談(2018年6月12日)から3周年となる。このタイミングで全員会議が開催されることもあって、6月中に何らかの対外メッセージを発信する可能性もあり、北朝鮮の動向に注目が寄せられる。
八島 有佑