隔離期間短縮・ビザ緩和から一転

 新型コロナウイルスの影響でほぼ鎖国状態のタイ。2020年7月から段階的に緩和し、商用ビザなどを保有する外国人などに対し、自己負担による14日間の強制隔離などが伴うものの、タイ政府は入国を許可し始めていた。一部富裕層に向けた観光ビザも発給し、中国人の観光客を受け入れることもあった。さらに、今年4月からは日本人などに対しては、ワクチン接種を証明すれば強制隔離期間を10日間に短縮し、隔離中の行動制限も大幅に緩和していた。

 しかし、3月下旬にバンコクのバーでクラスター感染が発覚し、タイ旧正月のタイミングに合ってしまったことから感染者が全土に拡大。コロナ第3波と呼ばれる事態になった。さらに、インド変異株の発覚から、インド、パキスタン、ネパールからの入国は一切禁止。ワクチン接種で隔離期間の短縮対応も取り消しとなった。

 そんなコロナに右往左往するタイへの入国者数を、タイ移民警察の統計から見てみよう。2020年と2021年執筆時点で確認できる統計の上位10か国をピックアップしてみた。

日本人の6倍強タイを訪れる中国人

日本人の6倍強タイを訪れる中国人

2020年タイ国別入国者数

 2020年1月の段階では、まだタイ国内ではコロナ禍には入っておらず、また中国の旧正月だったこともあり、1月だけで中国人は100万人もタイを訪れている。それ以外の月は確かにアベレージでは日本を上回っているものの、これは物流関係者、すなわち貨物航空機の乗務員、貨物船の船員など、一時的な入国者も含んでいるためだ。中国との貿易高は依然大きいので、日本人よりも多くなるのは必然だろう。

 ちなみに2019年においては日本人観光客は180万人と、過去最高を記録しているが、それでもタイを除いた国籍別では第6位に留まっている。第1位はやはり中国で、年間約1099万人が訪れた。2位はマレーシア(約417万人)、3位インド(約200万人)、韓国は(約189万人)で4位、さらにラオス(約185万人)が5位だ。これと比較すると、2020年は韓国人の入国者数がかなり落ちたと言える。

韓国人は10位圏内からも外れた

韓国人は10位圏内からも外れた

2021年1~4月タイ国別入国者数

 2021年は、執筆時点で4月までの統計が発表されているが、大幅に入国者の流れが変わっていることがうかがえる。

 これまでミャンマー、ラオス、カンボジアの入国者が多かったのは、タイの単純労働の担い手であったからだ。道路工事などはカンボジア人、飲食店にミャンマー人、家政婦などにラオス人が多かった。しかし、これらの仕事が減っていることもあって、入国者数は減っている。

 フィリピン人が急上昇してきたのは、おそらく、これまでと同じようにコンスタントな入国者数があったからと考えられる。タイ国内では欧米の英語教師は給料が高いため、英語能力が高く、かつ賃金が安いフィリピン人教師を採用するケースが少なくない

 韓国人は、これまでは日本人よりも入国者数が多かったが、それはあくまでも観光目的が圧倒的多数だったのだろう。タイにも韓国企業は多いが、近年はベトナムやカンボジアの方に韓国企業が増えているので、韓国人の長期滞在者は、タイには少ないのかもしれない

 他にはオランダ人の入国者が急にランクインするなど、コロナ禍は様々な影響をタイ経済に与えていることがわかる。
 

高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)

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