コロナ禍でのEコマース成長に暗雲
コロナ禍でのEコマース成長に暗雲
新型コロナウイルスの悪影響で、タイの小売市場の成長率は低迷を続ける見込みだ。2021年1月の段階ではタイの経済誌などで、コロナ禍ではあってもオンラインショッピングなどEコマースの成長もあって2021~2023年の小売市場の成長率は1.5~2.5%が見込まれる、という記事もあった。2016年には2.9%、2017年は3%、2018年には3.2%と成長してきたことを見れば、この予測はかなり楽観的だったと言える。
というのは、コロナの蔓延押さえ込みが成功しているかに見えたタイだったが、今年3月下旬にバンコク都内で発生したクラスター感染により、タイ国内ではコロナ第3波ともいわれる状態に陥っている。毎日市中感染者数、死亡者数の数が過去最高値を上回っているほどだ。タイ保健省の発表では、5月16日の時点で累計感染者数が10万人、死者は589人となった。
アルコール販売禁止中
タイ政府は、これを受けてバンコクなど感染状況がよりひどい地域に対して厳しい規制を実施。飲食店は店内サービスを禁止され、タイ全土でアルコール販売が禁止になっている。ただ、感染者数は現状でも増え続けているが、経済的な観点からか5月17日にはバンコクの飲食店における店内サービスの再開を許可している。
バンコクは、もとより人口が多いことから必ずしも外貨に頼らない状態で経済がまわっているが、プーケットやパタヤなどの外国人観光客を目当てにした地域は失業者も多い。当然、タイ全土でも大幅な収入減となっている世帯が少なくない。
一方、こういった事態になっているが物流は止まっておらず、また家電や自動車などを新たに購入する人もいる。大幅な収入減の中で家電などを選ぶ基準に変化があるのだろうか。タイでは元々は日本メーカーの家電が人気がある。これまでは韓国家電を、「日本メーカーが高いから代わりに買う」というタイ人が少なくなかった。
すでに日本の家電神話は終わっている
しかし、現在は日本でも同じだが、韓国メーカーの品質・性能が高くなっていること、デザインも優れていることから、必ずしも韓国家電を下に見る風潮はなくなりつつある。家電購入を検討しているタイ人によれば「今は日本メーカーも韓国メーカーも同じように比較して検討しています。一番は値段になるので、実際的にはその点で韓国や中国メーカーの方が日本のものよりも有利ではありますね」という。
かつてはタイ人の中で日本製品は憧れの的だったが、ここ何十年でメイドインジャパンがかなり少なくなり、それでも値段は高いということで、徐々に韓国メーカーの需要が高まってきている。自動車においてもヒュンダイが欧州のカーレースシーンで活躍するなどもあって、韓国製品に対してかつての安かろう悪かろうもなくなっている。
コロナ禍においては、収入減がさらに韓国メーカーの人気を後押しするとも考えられ、これからも日系家電メーカーなどは苦戦を強いられることは間違いなさそうだ。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)