まさに今、感染者数・死者数の記録を更新中のタイ
まさに今、感染者数・死者数の記録を更新中のタイ
新型コロナウイルスの押さえ込みが成功しているとされ、世界の優等生とまで呼ばれたタイだが、4月下旬から5月中旬に至るまで、毎日市中感染者数、死亡者の記録を更新している。いわゆる第3波と呼ばれる事態にタイは陥っているのだ。
タイは昨年3月26日に非常事態宣言を出し、いち早く政府が対策を講じてきた。逮捕や罰金などを含んだかなり強硬な手段で、国民もそれに従ってきた。そのため、国内感染者や死亡者が人口と比較してもかなり低い割合に押さえ込むことができ、タイ国内では感染の危険性が低いとかなり楽観ムードがあった。
しかし、12月に入り、国内での感染者が続々と発覚。陸続きのミャンマーからの不法入国者も多数含まれているとされ、日本のような島国とは違った事情から押さえ込みが困難なことを露呈していた。
トンローの高級バーで感染した日本大使
そんな中、今年3月下旬に、日本人居住者も多いトンロー地区でクラスター感染が起こっていた。富裕層や日本人向けの高級バーでのことで、発覚したのが潜伏期間も後半に差し掛かる4月中旬だった。
この時期はタイは旧正月に当たり、2020年はタイ史上で初めて旧正月そのものが禁止となったが、さすがに今年は恒例の水かけ祭り自体は、禁止継続ではあったものの、旧正月は実施。帰省する者が多かったことから、感染者も知らずに地方へ移動し、感染拡大が全土に広まってしまった。
このクラスター感染においては、駐タイ日本大使も感染したことを在タイ日本大使館も認めている。おそらく接待など仕事のうちで大使も訪れ、感染したとみられる。これに対して、バンコクの日本人社会では批判が起こっている。これまで大使館側は、日々メール通信などで不要不急の外出を控えるように呼びかけていたのにもかかわらず、その長である大使が感染とは笑い話にならないといった批判が相次ぐ。また、小売業や飲食業者は、「日本人のビジネスを妨げる」「日本人の評判を落とす」という声もあった。
そのとき韓国人社会は…
しかし、現実的には当のタイ人は、日本大使の感染に関してはあまり批判はない。というのは、このクラスター発覚直後に別のタイ人政治家が、タイの閣僚や軍隊・警察組織の幹部も同様の富裕層向けのバーを利用していることを暴露。タイ国民の批判はあっという間にタイ政府などに向けられたためだ。
いずれにしても、一般タイ人にとっては、外国の大使の名前は馴染みがない。ましてや、大半の人にとって自身のビジネスや生活に日本大使が関わることはない。タイ人にとっては、外国人の犯罪ニュースですらあまり興味を持つことがない。特にコロナ禍において外国人の長期滞在者も大幅に減っている。
たとえば、韓国人社会もかなり縮小しているとみられる。入国者数は2019年までは日本人よりも韓国人のほうが多かったのだが、2021年の1月~4月期においては総数が外国籍のランキングでは12番目になるなど、タイの韓国人は大幅に少なくなった。そういったこともあって、韓国人社会から何か大きな問題は、現状聞こえてこない。
むしろ、いい悪いは別にしても大使感染といったニュースは、日本人が今もタイで活発に動いている証拠と言えるのではないだろうか。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)