本丸・国営新華社も伝える
本丸・国営新華社も伝える
4日、在北朝鮮中国大使館の李進軍大使ら関係者が平壌の朝中友誼塔を訪れて献花したと中国国営メディアなどが大きく報じた。
中国の清明節(日本の盆や彼岸に相当)に合わせての訪問は、朝鮮戦争へ参戦した中国人民志願軍の戦没者へ哀悼の意を示すもので、献花後に参列者が深々と頭を下げる映像が中国中央テレビ(CCTV)などでも流れている。
このニュースは、中国官製メディアの本丸と言える国営の新華社通信も報じてSNS微博(ウェイボー)にも発信されている。
「抗米援朝精神」米国による侵略だと強調
新華社通信は、「清明節のころの平壌はまだ肌寒い春の日である。李進軍大使をはじめ在朝鮮中国大使館の職員は、平壌の牡丹峰にある中朝友誼塔に赴き、深い哀悼を捧げた。厳粛な雰囲気の中で、まずは中国国歌が流れ、中国人民志願軍の殉職者は不滅と書かれたリボン付きの花籠を友誼塔の運び、李大使がリボンの文字が正面に見えるように直して献花。最後に参列者全員で一礼し黙祷を捧げた」と伝えた。
朝中友誼塔は凱旋門北側、牡丹峰の丘に1959年10月に完成したとされる。参列者一同の背景に映り込む勝利通りにはバスや歩行者が確認できる。
北朝鮮では、各国大使館関係者の脱出が続いていて、現在、大使館として機能しているのは9か国との情報がある中で、中国大使館は正常に機能していることを示す狙いもありそうだ。
また記事では、「米国による侵略から中国は北朝鮮に抗米援朝精神で協力して米国に勝利した」とここでも改めて米国による侵略「北進」だと主張している。
反米キャンペーン目的での内政利用
今回の大々的な報道は、昨年中国による朝鮮戦争参戦70周年となる10月25日にも国内の反米世論を高揚させ、中国共産党への支持を集めるために抗米援朝精神キャンペーンを繰り返し展開してきた流れと言える。
中国人の感情が高まる清明節での献花式は、米国バイデン政権になっても改善の方向が見えない米中対立を意識した中国政府による内政利用だと考えられる。
ウェイボーには、新華社通信の投稿以外にもCCTV、環球時報、人民日報と国営や官製メディアが勢ぞろいで確認できる。それだけ力を入れているということだ。
官製でバズらせる
中でも中国政府の意思そのものと言える新華社通信の投稿には、1220(6日午後9時時点)件のコメントが書き込まれていて、確認すると「緬懐」という言葉が並ぶ。緬懐とは、追憶という意味だ。
コメント表示率は高く、新華社通信の投稿へコメントすることが、どういうことを意味するかを中国人自身が深く理解して書き込んでいると思われる。
中には、献花前に文字が読めるようにリボンを直す李進軍大使の行為を称賛したり、戦没者への敬意を感じることができるなどもあり、SNSには朝中友誼塔への献花を称賛するコメントであふれている。
つまり、“官製バズる”ということだろう。