新型コロナを理由に東京オリンピック不参加を表明

新型コロナを理由に東京オリンピック不参加を表明

東京オリンピック開催へ向け全国47の都道府県を聖火リレーが走っている

新型コロナを理由に東京オリンピック不参加を表明

 北朝鮮は4月6日、東京五輪に参加しない方針を正式に表明した。

 朝鮮体育省公式ウェブサイト「朝鮮体育」は、3月25日に開かれた朝鮮オリンピック委員会総会で今年の事業について議論し、不参加を決定したと更新。

 不参加の理由は、「悪性ウイルス(新型コロナウイルス)感染症による世界的な保健医療危機状況から選手を保護するため、委員らの提議により第32回オリンピック競技大会(東京五輪)に参加しないことを討議、決定した」と説明している。

北朝鮮の不参加により対話の糸口が消えたか?

 北朝鮮が不参加を表明したことにより、韓国側からも残念がる声が出ている。

 2018年の平昌冬季五輪をきっかけに南北対話を進めてきた韓国としては、東京五輪での対話も当然期待するものであったからだ

日本にとっても、オリンピックを理由とした対北交渉の糸口が1つなくなったと言える。

 朝鮮半島問題の専門家からは「不参加表明は政治的な理由によるものではないか」という指摘の声もあるが、北朝鮮側の発表では新型コロナ以外の言及はないため判断が難しい。

 そもそも新型コロナ感染拡大により日本国内でもオリンピック開催について賛否両論あることから、北朝鮮の判断には十分合理性があるからである。

 ただ、18年平昌五輪で急きょ南北合同チームが結成されたように、南北関係や感染状況の変化などで、今後、北朝鮮が何らかの形で大会に参加する可能性もゼロではない。

1964年東京オリンピックも不参加だった北朝鮮

 ところで、前回東京で行われた1964年五輪も北朝鮮は不参加となっている。

 北朝鮮は57年に国際オリンピック委員会(IOC)に加盟しており、64年東京五輪が夏季五輪デビューとなるはずであった。

 だが、北朝鮮が63年にインドネシアが開催したIOC非公認の新興国競技大会(GANEFO)に出場したことで、結果的にその道が絶たれることになった。

 このGANEFOはソ連や中国の支援を受けての開催であり、東西冷戦の最中であったため、西側諸国は警戒心を示していたのである。

 そのような政治的な影響を受け、陸上や水泳など複数の国際競技連盟(IF)は各国の競技連盟に対して通達を出した。

 その内容は、非加盟国と競技を行うことはIF規則に反すること、加えて、GANEFOに参加した選手に対しては資格を停止するというものであった。IOCもこの方針を事実上、支持している。

東西冷戦に翻弄された末のボイコット

 北朝鮮は、東京五輪に参加予定の選手のほとんどがGANEFOに参加したことで、東京五輪への参加が難しくなったのである。

 その後の議論の末、各競技のIFは大会が行われる64年8月までに資格停止処分の解除を行ったが、国際陸上競技連盟と国際水泳連盟は方針を徹底して曲げなかった。

 北朝鮮とインドネシアは五輪参加に向けて東京に選手を派遣し、IFとの協議も続けたが、結局は資格停止処分が解除されなかった。そのため、両国は東京五輪自体をボイコットし、参加せずに帰国することとなった。

 まさに東西冷戦に左右された出来事の1つであった。
 

八島有佑

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