中朝首脳が口頭親書交換
金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が「口頭親書」を交換したと朝鮮労働党機関紙・労働新聞が3月23日、報じた。
記事によると、金正恩総書記は親書で、南北関係や米朝関係に関する政策を決定したことを伝えるとともに(詳細は明かされず)、「敵対勢力の全方位的な挑戦と妨害策動に対処するため、両国は団結と協力を強化する必要がある」と主張。
これに対し、習近平主席は中朝関係の重要性を認めるとともに、「両国の人民にさらに立派な生活を与える用意がある」と表明したとのことである。
米中対立が強まる中、中朝関係の緊密化を大きく示すこととなった。
ウイグル問題や香港政策でも中国を支持
最近では、北朝鮮が人権問題について中国側に立って反論する場面も増えている。
たとえば、駐ジュネーブ北朝鮮代表部の韓大成(ハン・デソン)大使は12日、国連人権理事会における演説で、米国による中国のウイグル問題への非難を「内政干渉」だと主張した。
また、政府機関紙・民主朝鮮は24日、今月中国で開催されていた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)について伝える中で、同大会で決定した香港における選挙制度の変更に対して支持を表明している。
今回の制度変更によって民主派候補者の排除が進むことが予想されるため、米国やイギリスなどが強く非難していることに対して、同メディアは「他の国がどうこう言う権利はない」と指摘した。
これまでも北朝鮮は、中国の香港政策を積極的に支持しており、「中国の内政問題を他国が干渉すべきでない」と主張してきた。
ちなみに、国連人権理事会では23日、北朝鮮の人権状況を非難する決議も採択されているが、西側諸国の北朝鮮や中国に対する批判は「政治的謀略」であると断じている。
台湾については反応はなし。実は良好な朝台関係
ウイグルや香港をめぐる問題では中国側に立つ北朝鮮だが、米国が懸念を抱く台湾についてはどうだろうか。
次期米インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官(海軍大将)は23日、「中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、多くの人が理解しているよりも非常に差し迫っている」と危機感を表明した。
今のところ、北朝鮮側は、台湾関連では目立った反応を示していない。
実は、北朝鮮と台湾は正式な国交はないものの、昔から両国では盛んに貿易が行われるなど関係は良好であった。
特に1992年に韓国が中韓関係を重視して台湾と断交したことで、台湾は北朝鮮との関係を重視するようになった。
のちに撤回されるものの、台湾電力の核燃料廃棄物を北朝鮮国内で処理する合意に至ったこともある。
台湾は2017年以降、対北国連制裁の影響で北朝鮮との貿易をストップさせているが、2018年には、中朝合弁会社「朝鮮民族遺産国際旅行社」が台湾の「創新旅行社」と代理店契約を締結するなど交流は続いている。
このような事情もあり、北朝鮮が中台関係に立ち入ることは基本的にはないと考えられるが、今後、米中対立で台湾論争が激化した場合には、何らかの反応を示す可能性もある。
中ロ関係強化で米国の包囲網に対抗
中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は3月22日、ロシアのラブロフ外相と会談し、米国による他国への内政干渉に反対していくことで意見を一致させている。
米国による中国包囲網に対抗して、中国は北朝鮮やロシアとの結束強化を進めている段階である。
一方、北朝鮮としては、対米交渉を完全に断念したとは表明していないため、米国の態度次第では中国の理解を得ながら対話を進めていくと考えられる。
米中対立の中で、北朝鮮がどのように外交を展開させていくのか注目である。