外交官ら平壌から陸路移動し中国へ出国
3月18日、各国大使館の外交官や国際組織の駐在員23人ほどが北朝鮮を出国したとNKニュースが報じた。
記事によると、当初は16日出発の予定だったが、黄砂の影響で2日間延期されたという。出国したのは、チェコ、ナイジェリア、パキスタン、インド、ベトナムの外交官と国連世界食糧計画(国連WFP)の職員2人、コンサーン・ワールドワイド(アイルランドの人道支援機関)の平壌代表者1人と伝えている。
出国先は中国丹東で、18日早朝に平壌から新義州へ自動車で移動し、中朝友誼橋を渡り中国へ入国したようだ。
中国は外交官も例外なく入国地での強制隔離を実施しているため、現在、2週間の隔離を受けていることになる。
食糧支援やワクチン接種への支障を懸念
今回の脱出により18日時点、平壌で機能している大使館は、中国、キューバ、ロシア、イラン、シリア、ブルガリア、エジプト、インド、インドネシア、モンゴル、パレスチナ、ルーマニア、ベトナムの13か国。チェコ、ナイジェリア、パキスタンは、18日で関係者不在となり一時閉鎖に入ったとみられる。
国連WFPなどの国際機関関係者が不在となることで、今後、北朝鮮への食糧支援などへ支障が出ることを懸念する声も上がっている。
食糧ではないが、今の状況で、コバックス・ファシリティ(COVAX)から約100万人分の供給が決まっている新型コロナウイルスワクチンの運搬や適切に接種されているかなどの監視はできるのだろうか。
北朝鮮は、国際機関からの干渉や監視を減らすために長年にわたり駐在スタッフを減らすよう働きかけてきた歴史がある。図らずも新型コロナでその状況が実現したことになる。
外国人駐在者を追い出すことによって、国内情勢がブラックボックス化したという歴史は過去にもある。文化大革命のときの中国だったり、ポルポト政権下のカンボジアだったりだ。後に諸外国が再び入国して目にした光景は、とんでもない惨状だった。
中国がチェコ外交官へ嫌がらせも
チェコ大使館関係者が近日中に平壌を離れるとの情報は報じられていた。一部では、中国を避けてロシアへ出国かとの見方もあったが、他の大使館関係者と一緒に移動する関係か、結局、中国への出国となってしまったようだ。
チェコは、台湾を巡り中国政府から脅しを受けるなど両国の関係は悪化している。チェコ関係者のみ悪環境で隔離されたり、後付けの理由で隔離期間を延長されるなど政治的な露骨な嫌がらせを受けている可能性もある。
この点については、帰国後のチェコ外交官の発言に注目したいところだ。それとは別にぜひ今回、北朝鮮を出国した外交官には、平壌の現状について世界へ伝えてもらいたい。