朴槿恵前大統領弾劾の反動

朴槿恵前大統領弾劾の反動

退任後を見据えて極端な親北か反日政策へ打って出る可能性も 出典 Cheongwadae / Blue House [Public domain], via Wikimedia Commons

朴槿恵前大統領弾劾の反動

 文在寅政権は、2017年5月に発足した当初は、支持率が80%を超えるなど高支持率を記録していた。

 その理由としては、朴槿恵前大統領が経済の停滞、失業や雇用などの問題を改善できないまま弾劾罷免された反動もあり、文政権に期待が寄せられていたからだ。

 加えて、文大統領は就任前から国民生活第一を公約に掲げ、雇用拡大や賃上げなどを国民に約束した。実は、こうした公約を実現するための政策が、後々支持率へも影響してくることになる。

最低賃金引き上げと改正勤労基準法の実施

 政権発足当初は80%の高支持率を記録していたものの、支持率は大きく変動していった。

 文在寅政権は、賃上げを行うために最低賃金の2年連続引き上げなどを実施している。この賃上げは、1人当たりの人件費の増加につながり、個人経営者や中小企業などの経営を圧迫した。

 また、2018年7月からは改正勤労基準法により労働時間の上限を週68時間から52時間に短縮するなどの法改正を実施し、違反すれば事業者が処罰されることになった。

 改正勤労基準法は、2021年までに従業員300人以下の中小企業を含む全事業者に適用されることが決まっている。これにより韓国内のすべての事業者で労働時間が短縮される。

個人負債や破産を増加させるも新型コロナ対策で支持率回復

 韓国では長時間労働が常態化しており、こうした過労社会の脱却を目的とするだけでなく、雇用の増加も狙っていた。

 1人当たりの労働時間が減少することで、同じ量の仕事をこなすために企業は採用を増やす必要がある。つまり、それによって雇用の増加が見込めると試算していたからだ。

 文政権のこうした政策は、逆に作用し個人の負債や破産を増加させ、格差是正などの改善に結びつかず、2018年9月には支持率が50%を下回っている。

 その後、支持率は40%台を推移していたものの、2020年に韓国のコロナウイルス対策が評価されだすと、2020年4月の総選挙では文大統領率いる与党「共に民主党」が定数300のうち180議席を獲得して圧勝し、5月の第1週には支持率は71%を記録した。

不動産価格の高騰が止まらない

不動産価格の高騰が止まらない

文在寅政権の支持率推移(韓国ギャロップ調査) 出典 Phoenix7777 [Public domain], via Wikimedia Commons

不動産価格の高騰が止まらない

 コロナウイルス対策により、支持率を上げた文政権の現在の支持率は40%を下回り30%台となり、不支持率は50%を超え過去最高となっている。

 支持率低下の要因としては、不動産政策の失敗による不動産価格の高騰や新型コロナウイルス対策が後手に回り、感染者を増加させたことなどが挙げられる。

 さらに政策とは別に与党政治家の不祥事などが起き、これらの出来事も支持率の低下につながったと考えられる。

 韓国の大統領は任期5年で再選はない。今後、支持率が回復できなければ、低支持率のままで任期を終えることになる。

 残り任期1年3か月を切り、今後、文政権はどのように政権を運営するのか。このままレームダックへ突入するのか、それとも秘策、奇策に打って出て急回復させることができるのか。支持率の変化を注視していきたい。

千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。

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