死亡後の日本人男性から新型コロナ陽性を確認
新型コロナウイルスの感染拡大の押さえ込みに比較的成功していると言われるベトナムで、日本人が関わる感染が報告された。在ベトナム日本大使館からも登録している在住日本人に対し、緊急メールが送られている。
事態は2月14日の夜、ハノイ市疾病管理センター(CDC)から発表された。ハノイ在住の日系企業に勤める54歳の男性が亡くなり、死後の検査にてコロナウイルスの感染が確認された。男性は亡くなった状態で滞在先のホテルで発見されており、新型コロナウイルスが直接の死因かどうかは今のところ判明していない。
入国後の具体的な足取りを公開
この男性は1月中旬にベトナムに南部のホーチミンから入国したばかりで、ベトナム政府がすべての入国者に実施しているおよそ2週間の強制隔離も受けている。隔離中の検査はすべて陰性で、ハノイに到着しておよそ2週間後に亡くなった。
在ベトナム日本大使館からのメールによれば、強制隔離以降の男性の足取りは以下となる。
1.IBISホテル、ホーチミン市(1月31日夜)
2.ホーチミン市発ハノイ市行きベトナム航空VN254便(2月1日11時発13時20分着)
3.タイホー区クアンアンのタイホー通り2号にある「サマセット・ウェストポイント・ホテル」(2月1日から13日まで)
4.ホアンキエム区ファンチュトリン23号の「サンレッドリバー・ビル」(9階の903号室および2階の「東京レッドグリルレストラン」(2月2日12時から13時まで)。
5.タイホー区クアンアンのXuan Dieu通り168号にある「八十八商店レストラン」(2月3日18時から20時まで)
6.タイホー区クアンアンのXuan Dieu通り51号にある「ラッフルズ・メディカルクリニック」(2月4日朝、2月8日)
7.バーディン区リンランのKim Ma Thuong75号にある「とり吉(とりきち)レストラン」(2月5日19時から21時まで)
CDCと日本大使館からは、上記の場所に、この日程に近い日に行ったことがあるという人は地元の医療ステーション、もしくは医療センター、あるいは電話番号0969-082-115、0949-396-115に電話するように呼びかけている。
男性は死亡した状態で発見されており、足取りはこれだけなのかどうかはわかっていない。地元紙によれば、滞在していたサマセット・ウェストポイント・ホテルは現在封鎖されているという。
在留邦人の間で感染拡大懸念が広がる
在住日本人によれば「商社に勤めていた方で、多くの人と接触していたとみられます。また、泊っていた場所も日本の有名団体や企業が利用する場所なので、日本人の間で感染拡大が懸念されています」という。
男性の職場があるビルに事務所を構える日本人は、「ビルごと封鎖になったら仕事に支障が出る。直接面識はないが、同じビルなのでF2、F3になっているかもしれない。その場合は強制隔離だったか、検査結果を待つのか。どうなのだろう」と話す。
ベトナムでは、感染者と直接接触した人をF1、F1と接触した人をF2、F2と接触した人をF3として状況把握に努めている。これによって、国民側もコロナを身近に感じたり、危機管理ができることから、この手法もまたベトナム政府が押さえ込みに成功している理由の1つとも言われる。
海外駐在員なので韓国企業などとの繋がりの可能性も
しかし、問題は簡単ではない。と言うのは、ベトナムは今、ベトナム人が最も大切にする連休である、テト(旧正月)休暇に入っている。2021年は2月12日が元旦だったが、帰省ラッシュの密を避けるためか、政府は10日から休みとし、16日までがテト休暇になる。
つまり、濃厚接触者であるF1の人も含めて、たくさんのベトナム人が地方へと散ったために、場合によっては広範囲に新規感染者が出る可能性も指摘されている。
男性は商社に勤めていたと言われ、また企業が入居するビルも日系企業が複数入居する。日本人会社員の中で接触者は多数いるとみられるし、海外進出企業なので、日系だけでなく、ベトナムに多い韓国企業とも接触している可能性もある。ベトナム人だけでなく、グローバルな企業ゆえに、韓国をはじめ、多国籍のグループに感染拡大の可能性も考えられる。
韓国・聯合ニュース韓国語版は、15日午前10時にこの件を報じ、ベトナムでは先月27日以降、ベトナムでは第3波と呼べるような感染拡大が発生しており、13の地域で638人の陽性者を確認している。亡くなった日本人男性と同じホテルに複数の韓国人が住んでいると伝えている。
現状は発覚したばかりのため、情報が少ない。遺体発見時は、感染確認もされていなかったので、現場検証に来た警察官なども隔離対象になり、隔離済みだとCDCは発表している。
この事件に関しては続報を待つ必要がありそうだ。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)など。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)