金与正氏の人事の謎
金与正氏の人事の謎
北朝鮮で開催されていた第8回党大会が12日に閉幕した。開催期間は8日間と、歴代党大会の中でも最長となった。
発表された人事では、長年重要ポストを務めた朴奉珠元首相が常務委員を退き、その代わりとして金正恩氏の側近とされる趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏が新たに常務委員に昇進したことが判明した。
一方、金与正党第1副部長が「党政治局候補委員」から外れたことも発表された。
肩書きの変動については、今後、分析が必要だが、これだけをもって「降格」と判断するのは尚早である。
たとえば、発表された党中央委員会の名簿(138人)では金与正氏は21番目に掲載されている。金与正氏の前後には、前述の趙甬元氏(18番目)や、朴泰成(パク・テソン)党中央委員会書記局書記(20番目)、李英植(リ・ヨンシク)党宣伝扇動部第1副部長(22番目)など、肩書き上では金与正氏より「格上」の人物が名を連ねている。
このことから金与正氏については肩書きと党内序列が連動しておらず、依然として党内で重要な位置にいると見ることができる。
なお、金与正氏は1月13日には韓国を非難する談話を自身の名義で出していることから、党大会後も引き続き「対南関係」を担当していると考えられる。
総書記に就任した金正恩氏
今回の党大会では、最高指導者である金正恩氏が「総書記」に就任した。
総書記の肩書きが使用されるのは、2011年末に父親である金正日総書記が死去して以来となる。
2012年の党代表者会において金正日氏を「永遠の総書記」と位置づけ、総書記ポストは事実上の「永久欠番」となったとみられていた。
金正恩氏は党トップの肩書きとして総書記の代わりに「第1書記」を使用し、2016年の第7回党大会では「党委員長」を新設している。同大会では金正日政権から続いていた「書記局」制度を廃止して「政務局」に再編しており、その後も独自の体制を築き上げてきた。
このような流れの中で、今回、廃止していた書記局を復活させ、「党の首班」としての総書記に推戴されたことは大きな変化である。
党大会決定書「総書記は党の首班、革命の最高頭脳」
1月10日に採択された党大会決定書では、総書記ポストを「全党を代表して領導する党の首班で」、「全党の組織的意志を体現した革命の最高頭脳であり、指導の中心、団結の中心である」と定義している。
金正恩氏については、「主体革命の唯一無二の継承者、指導者」、「卓越で洗練された指導で、短い期間で我が共和国の総合的国力と地位を最上の境地に引き上げるという民族史上もっとも特記すべき業績を積み上げた」と強調。
その上で、金正恩氏の総書記就任は「時代と歴史の厳かな要求であり、すべての党員の総意であり、我が人民の一途な願い」と記している。
もちろん肩書きがどうであれ金正恩氏の最高指導者としての立場には変化はないが、今後どのような体制を築いていくのか注目が寄せられる。
八島 有佑