200種類のたばこが売られる北朝鮮で禁煙法
北朝鮮は11月4日に開かれた最高人民会議常任委員会で「禁煙法」を採択した。5日付の『労働新聞』によると禁煙法は、31項目からなり過去に採択された禁煙に関する法律よりも強化され駅や教育機関、医療施設、映画館、劇場など公共性が高い場所や生活関連施設での喫煙を禁じるもので違反者には罰金を科すという。
北朝鮮は200種類ほどのたばこ販売が確認されるたばこ大国で知られており、今でもガイドや北朝鮮関係者への鉄板土産物はたばことなっている。特に喜ばれる銘柄は、「セブンスター」、「マルボロ」などで、「メビウス」に味が近いとされる中国の「中南海」には渋い顔をする(メビウスは喜ぶ)。
北朝鮮は2005年に「たばこ統制法」を採択し、その後、改正を繰り返し国を挙げて禁煙を推進してきたとされる。
WHOの報告は各国任せ統計をまとめたもの
今回の禁煙法を伝える多くの報道には、「世界保健機関(WHO)」が報告した北朝鮮の15歳以上の男性喫煙率が46.1パーセント(2019年)であると添えられている。この数字が高いという意味で引用していると思われるが、そもそも北朝鮮でアンケートや調査が成り立つのであろうか。参考程度にしかならない。
実はWHOが発表する統計とは各国が調査した数字を報告させたものを集計したものだったりする。つまり、WHOが自ら人員を派遣して調査したものでなく各国任せのものだ。
この点は今回の新型コロナウイルスの感染者数の報告でも問題が露呈している。中国のPCR検査陽性者数が2月末に突然ゼロ近くに激減し、それ以降、他国で見られるような第2派、第3派が確認されていないことや北朝鮮はいまだに陽性者数ゼロと報告し続けている(=WHOが世界へ示す報告)。
女性の喫煙は不道徳な行為
女性の喫煙は不道徳な行為
北朝鮮政府が禁煙運動を進めている以上、着実な成果を出していることを国外へアピールするために当然ながら報告する喫煙率は低く出したいはずだ。
北朝鮮研究の識者の中には北朝鮮男性の喫煙率はもっと高いはずだと考える識者は多い。加えて北朝鮮は、女性の喫煙率は0パーセントとWHOへ報告しているが、脱北者によると日本の女性の喫煙率より低い韓国と比べてもさらに低いのは間違いないが、北朝鮮にも一定数の女性喫煙者はいると証言している。
北朝鮮は、朝鮮儒教の影響で女性の喫煙がタブー視されており、女性が人前でたばこを吸うことは飲酒よりも「不道徳な行為」と見なされている。
憲法を超越した存在だから関係ない?
それよりも北朝鮮研究の識者が注目しているのは、禁煙法を金正恩委員長が守るのかという点である。
今年に入ってからの現地指導の写真や映像でも手にたばこを持っている金正恩委員長の姿が頻繁に登場している。今後どうなるのであろうか。
この疑問に対してある識者は、金正恩委員長は北朝鮮の憲法や法律の縛りは受けない超越した存在なので関係ないとの見方を示す。確かに金正恩委員長は憲法よりも上位に位置する朝鮮労働党のトップなので禁煙法を遵守する必要はないのかもしれない。とは言っても今後の労働新聞など官製メディアでトップを飾る金正恩委員長の写真や動画からはたばこを手にした姿は減っていくのではないだろうか。