1か月半で完成した朝鮮戦争映画

1か月半で完成した朝鮮戦争映画

10月23日から中国全土で上映されている金剛川

1か月半で完成した朝鮮戦争映画

 中国の朝鮮戦争参戦日である10月25日でクライマックスを迎えたと思われた中国の反米キャンペーンはまだ継続されている。

 現在、中国では興味深いプロパガンダ色が濃い映画が上映されている。「金剛川」という朝鮮戦争をテーマにした戦争映画だ。

 何が興味深いかと言えば、この映画、たったの1か月半で完成させたということだ。「映画.com」などでも伝えているが、クランクインが8月上旬で、クランクアップは9月20日、10月23日に中国全土で公開と驚くべき短期間で制作されている。

 時間的な問題なのか、それとも別の意図があったのか不明だが、公開直前まで映画の内容は秘密のベールに包まれていたことも話題を呼んでいたようだ。

 とここまでは日本でも報じられている表面的な情報となる。しかし、さらに掘り下げていくと、中国政府によるプロパガンダ臭を漂わせていることが見えてくる。

週間映画興行ランキング1位だが誰も見た人がいない

 映画公開直前から11月上旬にかけて中国SNSでは、#金剛川の投稿で埋め尽くされていた。「CRI(中国国際放送局)」発表の「中国大陸部映画興行週間ランキング(2020年11月2日~8日)」によると、金剛川は1位で、総興行収入は8億8000元(約126億円)を突破している。

 ますますどんな映画か興味が湧いてきたので中国語サイトで映画のあらすじや感想を探してみたが、あまり映画内容を詳細に説明しているサイトはヒットしない。

 一方、上海在住の日本人と思われる日本語のブログがあり、それによると、映画の予告やポスターを見るとランボーばりの戦争アクション映画を彷彿とさせるが、見てみると戦闘シーンはほとんどなく、ただ川を舞台に淡々と展開される映画とあった。

 映画の設定は朝鮮戦争休戦直前の1953年。北朝鮮へ進軍した中国人民志願軍の戦闘や葛藤、戦争の悲惨さを伝えるものだという。

 しかし、これだけだと、さっぱり煮え切れないので、中国在住の中国人の知人たちへ金剛川について感想を尋ねてみた。

 10数人へ聞いてみたが、映画自体を知らないか驚くことに聞いた全員が誰1人として見ていなかった。上海や瀋陽、深センなどの映画館情報を調べると確かに現時点でも上映は確認でき、映画を見た人の感想、評価が書き込まれている。

7000万人の中国共産党員総動員?

7000万人の中国共産党員総動員?

チケット購入サイトでは評価7.0、200か所の映画館で1930回上映されているとある

7000万人の中国共産党員総動員?

 この現状をどう見るか。ありふれた言葉で表現すると国威発揚と愛国心を刺激するためのプロパガンダ映画で、抗米援朝の反米キャンペーンをさらに盛り上げるために官製で盛り上げたのだと考えられる。

 では、週間映画興行ランキング1位で126億円の興行収入があるのに少なくても尋ねた中国人が誰も見ていないのはどういうことか。

 考えられるのは、7000万人を超えるとされる中国共産党員と人民解放軍、中国共産党に仕事上、立ち位置が近い大学関係者や国営企業など関係者へ無料チケットでも配布して総動員させたのかもしれない。

 ちなみに、金剛川ってどこにあるのか思うかもしれない。どうやら中国人も同じ疑問をいただいたらしく「金剛川どこ?」というキーワードが無数にヒットする。

 参考程度の情報となるが、金剛川とは南北軍事境界線近くを流れソウルの漢江へいたる北漢江へ合流するまさに金剛山を水源とする上流の川を指す。
 
 実は中国政府はこの謎が多い金剛川に別の思惑も込めて進行させている可能性もある。その話はまた別の機会で。

参考サイト
朝鮮半島 金剛山電気鉄道を地図で追う地図と鉄道のブログ


「金剛川」、朝鮮戦争の戦い、HD映像

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