南北分断後もっとも良好な関係になった2018年

南北分断後もっとも良好な関係になった2018年

2018年4月27日、板門店「徒歩橋」で1対1で談笑する両首脳(提供「コリアメディア」)

 現在、韓国と北朝鮮の関係は良好とは言い難い状況に陥っている。しかし、2018年の両国関係は、南北分断後初くらい大きく前進した時期であった。今回は、南北関係が再び悪化へ転じたターニングポイントはどこにあったのかを振り返ってみたい。

 2018年4月には、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長は軍事境界線がある板門店の韓国側施設である「平和の家」で首脳会談を行っている。このとき金正恩委員長は北朝鮮の指導者で初めて軍事境界線を越え南側の地を公式に踏むという歴史的な瞬間となった。

 この会談に関して、北朝鮮国営の「朝鮮中央通信」は、北朝鮮と韓国がともに繁栄する道のりの新たな節目だと報じた。また、非核化への具体的な手順などについては触れられなかったものの、「完全な非核化を通して、核のない朝鮮半島の実現」を共同目標とすることで同意している。

 さらに1953年から休戦状態となっている朝鮮戦争を終結するために平和条約を年内に締結する方針を示した。

 2018年9月には、再び南北首脳会談が平壌で開かれ、両首脳は朝鮮半島の非核化や経済協力について盛り込まれた平壌共同宣言について署名している。まさに初づくしの2018年だった。

 この時期が韓国と北朝鮮の関係のいわばピーク状態で、ここを境に再び関係が悪化することになる。

米朝ハノイ会談の決裂の原因は韓国のミスリードか

 2018年に関係改善に向けて大きく前進したかに思えた両国は、2019年から再び関係悪化が露呈し始めた。

 その原因としては、2019年2月にベトナムのハノイで行われた米朝首脳会談の交渉決裂が挙げられる。この交渉が決裂した要因の1つに韓国のミスリードがあると指摘されている。

 韓国は北朝鮮の思惑をくみ取り、それを米国側に伝えることができなかったといわれ、両国にとって成果のなかった2回目の米朝首脳会談で、北朝鮮の韓国への評価は下がったとみられている。その結果、仲介役を自負していた韓国は北朝鮮だけはなく、アメリカからも拒否されることになる。この時点で、南北関係は2018年のような友好的な関係とは言い難い状態が表面化したのである。

対面での協議を呼びかけるも拒絶される

 北朝鮮は、その後、対韓態度を硬化させていき、2019年10月に韓国に対して、南北協力事業の1つとして韓国側が北朝鮮の金剛山観光地区に建設した施設を撤去するように求めた。

 韓国はこの件に対して対面協議を呼びかけたものの、北朝鮮は対面協議を拒絶し、書面による協議を行うことを求める通知文を送るなど開催の目途は立っていない。文在寅政権は、この協議を北朝鮮との対話のきっかけにする意向があったが上手くいかなかった。

 2020年6月には、北朝鮮に向けて韓国から飛ばされた批判ビラに対する報復処置として、北朝鮮は南北のホットラインを切断、16日には「南北共同連絡事務所」の爆破に踏み切っている。
 

IAEA北朝鮮の核開発に深刻な懸念。さらに遠のく関係改善

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2018年9月19日、韓国大統領として初めてマスゲームを観覧(提供「コリアメディア」)

 さらに、北朝鮮は韓国との平壌共同宣言の中で、非核化について進めるとしていたものの、「IAEA(国際原子力機関)」の2020年9月の報告書によれば、核関連施設がある場所で車両の動きを確認しており、ウラン精鉱の製造施設も稼働させている可能性があるとしている。

 韓国は南北関係悪化が鮮明になった2019年春以降も南北融和の政策を行っているものの、北朝鮮側には、韓国と再び友好的な関係を築こうとする姿勢は見られない。こうした状況の中、今後、韓国がどのように北朝鮮と向き合っていくのか注視していきたい。

千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。

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