北レス勤務中の何気ない発言も指導される
北レス美人スタッフはどうやって選抜され派遣されるのか?(2/3)の続き。
北朝鮮レストラン(以下、一部北レス)の場合は、一般的に勤務年数は3年ほどだが、閉店したバンコクの北レス「ヘマジ館」には同じ店だけで5年勤務という女性スタッフもいたので派遣国や現地北朝鮮大使館の判断によって異なるのかもしれない。
余談だが、ヘマジ館で当初は、〇〇同務(トンム=同僚の意味)は4年目など具体的に教えてくれていたのが、ある日から「分かりません」に変わった。おそらく、生活総和で批判されて指導が入って修正したのだと推測される。
各国の北朝鮮レストランでは勤務する北レスから徒歩圏内に寮があり、集団生活をおくる。店によっては北レスの上層階や敷地内に寮がある場合も確認されている。ほぼ無休で働き、外出は月に2度ほど全員で一緒に買い物や観光をする。当然ながら個人行動は許されない。
制限された環境でも3年海外にいると感じる疑問
制限された環境でも3年海外にいると感じる疑問
北朝鮮レストランで働く労働者がもらえる給料(名目上は給料ではなく生活費)は北朝鮮へ送金することもできた。店の責任者を通じて手数料を払い本国の両親などへ届けるルートが確立されていた。どうやって運ぶかと言えば、脱北した元海外派遣労働者によると北朝鮮大使館や領事館の関係者がハンドキャリーで現金のまま持ち帰っていたと聞いたとのことだ(しっかりと届けられて紛失されたことはないと証言)。
「中国だけではなく仮に海外で行動範囲がものすごく制限された不自由な環境であっても3年も滞在していると、今まで何十年間も信じ込んでいた価値観を疑うようになります。私は中国で過ごしているうちに祖国の状況はおかしいと思うようになりました」(脱北した元北朝鮮レストランの女性スタッフ)
朝鮮労働党のエリート党員が脱北した理由
中国滞在中に脱北した別の男性は、「2013年12月に張成沢氏が粛清されたときに周りで関わっていた中国人が『義理とは言え叔父を殺すのはおかしい、間違っている』との話を聞いて、『異常なことなのか?』と疑念を抱くようになりました。それまでは、中国に滞在していても祖国の最高指導者の決定は当然のことでなんら間違っていないと信じ込んでいた私の中の国家意識へ亀裂が入り崩れ去りました」
この男性は朝鮮労働党の元党員で、いわばエリートとして中国での買付業務に従事していた。一般の派遣労働者とは違い比較的に自由に動き回ったり、中国人と接触できる立場だったそうだが、それでも、2、3年は祖国に対して「おかしい」など疑念を抱くことはなかったとのこと。
10月23日の『産経新聞』によると10月時点で、中朝国境の丹東だけでおよそ8万人の北朝鮮人労働者が丹東市によって確認されている。そのうち2万人はすでにビザが切れているが、北朝鮮側は新型コロナウイルス感染症対策を理由に国境を厳重に封鎖しているため帰国を拒否している状況が続いている。そのため、中国政府は不法滞在を容認していると伝えている。