活字メディアから動画メディアへ移行が進む

活字メディアから動画メディアへ移行が進む

世界規模で市場が拡大する動画配信サービス

活字メディアから動画メディアへ移行が進む

 近年、インターネットは世界中で利用されており、多くの人が様々な情報網から簡単に情報を得られるようになった。そして今、勢いのある情報発信の手段と言えば、「動画配信サービス」だろう。映画や海外ドラマに限らず、国際情勢から雑学までも活字から動画へと移行しつつある。

北朝鮮発のYouTubeチャンネル「NEW DPRK」とは?

 そういえば最近、北朝鮮当局が「ユーチューブ」に開設したと考えられる「NEW DPRK」が一部メディアで話題になっていた。動画は北朝鮮の日常を伝える内容になっており、政治的な要素は、ほぼないことが分かる。興味のある人は下記の参考動画を見てほしい。


Primary School Preparation | Nomal North Korea Family | New DPRK

 動画では「北朝鮮の一般的な家庭」として紹介されているが、おそらく市民の中では裕福な家庭と推測できる。世界に向けて自国は豊かな国であるとアピールすることを狙っているのだろうか。その狙いが何であれ、このような情報発信は北朝鮮にとってメリットになるのは間違いない。今後もこういったプロモーション的な要素の強い動画は次々と配信されそうだ。

北朝鮮におけるメディア・情報=国にとっての利益

北朝鮮におけるメディア・情報=国にとっての利益

平壌地下鉄のホーム中央にスタンド掲示されている労働新聞

 しかし、北朝鮮の一般市民がユーチューブに自由に動画を投稿するのはまだまだ先になるだろう。全30巻ある『朝鮮大百科事典』によると、「メディア活動は社会政治的活動であるだけに階級的な性格を帯びる」と書かれており、さらに「人民大衆に貢献する言論は、人民大衆の利益と意思を代弁し、社会の正義と心理を守護し、先進思想を擁護して普及することに貢献する」とされている。

 言い換えるならば、国にとって利益がないと統制されてしまうわけだが、一般市民にはそのジャッジは難しい。そもそも、貧困に苦しむと伝えられる市民が本格的なカメラ機材を用いて動画を撮影することは現実的ではないだろう。

北朝鮮ではスマホで労働新聞閲覧も。国外向け電子版は無料?

 その他のメディア事情も見てみよう。現在、北朝鮮の国内メディアもインターネット(正確には海外サイトは遮断されているのでイントラネット)を活用し始めている。主要新聞である『労働新聞』はネット配信で同国の市民たちはスマートフォンや携帯電話などの情報端末で閲覧することも可能だ。その他の新聞としては『民主朝鮮』があり日本でも関係図書館で閲覧することができる。

 また通信社においては「朝鮮中央通信社」がある。報道協力協定をロシアや中国など40の通信社と結んでおり、各国のマスコミに報道資料を提供。日本においては、「朝鮮中央通信」を「朝鮮通信社」(東京都台東区)が窓口になって提供している。

 今、確実に情報網は広がってはいるが、北朝鮮の市民にとって情報の取捨選択の範囲はまだまだ狭い。日本人と同じように、好きなテーマで自由に言葉をネットに公開できる時代はいつ来るのだろう。

参考サイト
労働新聞(朝鮮語・英語・中国語)
 労働新聞の内容を電子版として無料で読むことができる。

井上 一希
フリー編集者。マガジンハウス「anan」、宝島社「sweet」、読売新聞ライフスタイルページの編集担当。好きな食べ物は「冷麺」。

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