アメリカで北朝鮮への核関連物質の密輸出容疑で馬暁紅らを起訴
日本ではすでに忘れさられて大きく報じられていないが、昨年7月、アメリカである事件の起訴が行われた。
北朝鮮へ核関連物質を不正輸出していたとして2016年、アメリカから制裁対象に指定された「丹東鴻祥実業発展有限公司」の馬暁紅元代表ら4人をニュージャージー州連邦大陪審が起訴した。有罪となれば最高20年の懲役、制裁違反罰金100万ドル(約1億円)が科される見通しだという(参考 中国人実業家ら4人を起訴 米司法省 対北朝鮮制裁に違反)。
もちろん、アメリカで訴訟した話なので、中国へ直接的な影響を与えるものではない。7月に施行された「香港国家安全維持法」のような域外適用を明文化して、「犯罪人引渡し条約」を結んでいれば馬らの身柄が引き渡される可能性もあるが、アメリカと中国は、犯罪人引渡し条約を締結していない。また、当然ながら属地主義でアメリカ領土内での適用となる。
米制裁対象指定と同月中国で拘束
米司法省によると、丹東鴻祥実業発展有限公司の馬被告らは、2009年から15年の間、20以上のダミーが会社を使い大量破壊兵器の拡散に関与し制裁対象となった北朝鮮の銀行による違法な金融取引を隠蔽しようとしたなど4つの罪で起訴された。
2016年9月、アメリカがウラン濃縮に必要な物質の密輸や上記内容で丹東鴻祥実業発展有限公司と創業者で代表だった馬暁紅被告、幹部3人を米制裁対象へ指定すると発表。ほぼ同時期に丹東公安は馬被告らを拘束している。翌年、中国での嫌疑は脱税と報じられる。
すでに経営に復帰とも。中朝ビジネスを隠れ蓑に密輸
すでに経営に復帰とも。中朝ビジネスを隠れ蓑に密輸
美人経営者として知られていた馬被告の拘束から4年、現在、どうなっているのかと調べると、現時点でも丹東で釈放されたり起訴されたという情報はない。
丹東関係者によると拘束ではなく特定の建物の中での軟禁に近い状態で外出はできないが、すでに経営へ復帰しているのとの見方を示す。事実、丹東鴻祥実業発展有限公司や傘下のレストランや旅行会社などは代表者を変えているが現在も営業を続けている。
馬暁紅被告の北朝鮮との密輸などの一連の事業には2013年12月に失脚した張成沢氏が深く関わっていたとされる。張氏の失脚が馬被告の制裁指定に影響しているとの見方が有力だ。
米司法省の起訴状には、20以上のダミー会社とあり、それらの中には合法的な中朝貿易や旅行会社、中朝合弁ホテル事業など中朝ビジネスがあった。しかし、これらの利益はたかが知れたもので、あくまで利益の本丸は、核開発物質の不正輸出であり、これを覆い隠すためのその他のダミービジネスだったがアメリカの見立てのようだ。
(続く)