新型コロナウイルスで大減速する北朝鮮経済
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、発展途上国の経済活動がかつてなかったようなペースで減速している。その国の1つが北朝鮮だが、現在の同国においては「コロナショック」に加え「台風被害」や「食糧危機問題」も大きな課題となっている。
それでは上記に挙げた問題が、今後、北朝鮮においてどのような展開をもたらすのか。
平均寿命71.6歳。三重苦が北朝鮮へ与える影響
まず、過去の例を見てみよう。北朝鮮は自然災害をきっかけに食料配給システムが崩壊。1990年の後半には飢饉によって人々の暮らしが脅かされた。韓国統計庁が2011年に発表したこの飢饉の規模は約33万6000人。飢饉を挟んだ2008年の第2回センサスでは平均寿命は69.3歳まで落ち込んでいる。
現在の北朝鮮の平均寿命は71.6歳(ちなみに日本86歳、韓国82.6歳。出典ザ・ワールド・ファクトブックより2020年推定)と水準が戻りつつあるが、新型コロナウイルス・台風被害・食糧危機の三重苦により過去の状態に戻ってしまう可能性も十分に考えられる。
1.92と日本より高いがすでに少子化問題も
加えて、北朝鮮は日本同様に少子化現象が起きている。CIA(米中央情報局)が毎年発行する『ザ・ワールド・ファクトブック』によると、北朝鮮の合計特殊出生率は1.92。日本1.43、韓国1.29(いずれも2020年推定)。2015年のセンサスでは1.89だったので微増はしているものの、いまだに低い水準に留まっている。この理由については、日本と同様に社会経済の発展によるものと推測できる。1人の子どもを産み、子ども1人に対して手をかけて育てることを重視するようになったからだ。
現在、北朝鮮は人口増加政策により出産を推奨しているが、経済が悪化している状態で国民がどこまで応えられるのかは未知数だろう。
北朝鮮の寿命を延ばすために必要なこと
北朝鮮の寿命を延ばすために必要なこと
それでは北朝鮮の平均寿命を延ばすためには何をすべきか。第1に考えられることが医療技術の進歩である。平均寿命が長い日本においては寿命の伸長、死因構造の変化に影響を与えたものとして、医薬品や医療機器、医学の進歩がある。先進国のサポートを受け入れることが今後のキーとなる。
さらに公衆衛生活動、経済の進展、食生活の改善なども挙げられるが、今、取り組むべき課題は食糧生産システムの回復だろう。一昔前と比較するとこの食糧問題は解消しつつあるが、まだまだ十分と言える状況ではない。
今の北朝鮮では、農民は国から借りている土地に対し、生産した穀物の納付義務がある。そのため、市場には穀物が高値で流通している状況であり、都市にいる労働階級者は高額のため十分な穀物を得ることができないからだ。北朝鮮はこうした問題と正面から向き合わなければならない。
様々な課題が山積みの北朝鮮だが、この状況を打開するには先進国のサポートは不可欠だろう。
参考サイト
THE WORLD FACTBOOK
井上 一希
フリー編集者。マガジンハウス「anan」、宝島社「sweet」、読売新聞ライフスタイルページの編集担当。好きな食べ物は「冷麺」。