延期となった東京オリンピック2020へ参加予定
延期となった東京オリンピック2020へ参加予定
今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、幻となってしまった「東京オリンピック2020」。
長い歴史をさかのぼっても「ウイルス」による延期は初の出来事だ。9月7日に「IOC(国際オリンピック委員会)」のジョン・コーツ副会長は、「東京オリンピックは来年7月23日に開幕する」と表明したが、実際に要となるポイントは「その時期までにワクチンが開発されるか?」ということだろう。
また、約1万1000人が出場の予定とされているが、日本ではいまだに外国からの渡航者の大部分の入国を認めていない状況にある。ここで個人的にもっとも気になっていることが「東京オリンピックに北朝鮮は参加するのか?」ということ。
近年、北朝鮮はスポーツに力を入れており、東京オリンピック2020の参加にも意欲的だった。「ロイター通信」ではIOC のバッハ会長は、「北朝鮮は2020年の東京オリンピックと、2022年の北京冬季オリンピックに参加する」と語っている。
そこで今回は、北朝鮮のオリンピック参加への期待を込めて北朝鮮とオリンピックについて触れてみたい。
1964年東京五輪はボイコット
まず北朝鮮が国際スポーツ大会に参加したのは1960年代。オリンピックでは64年1月のインスブルック冬季オリンピックが初参加。夏季オリンピックでは初参加となった72年のミュンヘン大会において種目「射撃」でリ・ホジュンが北朝鮮初の金メダルを獲得。以降、2016年のリオデジャネイロ大会までトータル16の金メダルを獲得している。
ちなみに1964年10月の東京オリンピックは北朝鮮選手団を万景峰号で来日させるも最終的にIOCから一部選手の参加を認められず開会前日に不参加届けを提出しボイコットしたため不参加に。その次の68年のメキシコシティーオリンピックでは国名の問題が解決せず2大会続けての不参加となっている。
北朝鮮が強い金メダル数が多い競技
北朝鮮がもっとも金メダルを獲得した数の多い競技が「重量挙げ」だ。2012年に開催されたロンドンオリンピックでは男子56キロ級のオム・ユンチェルが金メダルを獲得。彼は北朝鮮で英雄的な扱いを受けているという。また、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、女子重量挙げでリム・ジョンシムが金メダルを獲得。その他の競技では、卓球、体操、女子柔道などでメダルを獲得している。
ここで興味深い文献を見つけたので紹介しよう。石坂浩一立教大学異文化コミュニケーション学部准教授らの『北朝鮮を知るための55章【第2版】』(明石書店)より引用する。
派遣された美女応援団が話題となった仁川アジア大会(2014年)、キム・ウングクが男子重量挙げ62キロ級で優勝した。キムは、表彰式後の囲み取材で、「共和国の旗を胸にできるのは、体育人しかいない。元帥様の愛と配慮があるからです」と語った。
北朝鮮代表としての誇りとプレッシャーを感じさせる言葉だろう。ここまでの愛国心はやや極端ではあるが、日本人の代表選手も少し見習うべきものがあるかもしれない。
実現の可能性はかなり未知数ではあるが、2032年の夏季五輪開催地として韓国が北朝鮮との南北合同開催を計画しているという報道もある。政治的な状況を見守りつつ、今後の動向に注目していきたい。
井上 一希
フリー編集者。マガジンハウス「anan」、宝島社「sweet」、読売新聞ライフスタイルページの編集担当。好きな食べ物は「冷麺」。