中国メディアが連日報道する北朝鮮の恩赦
北朝鮮が9月17日に恩赦を実施すると8月15日に発表したことを中国官製メディアが報じている。「中国中央テレビ(CCTV)」の報道を同じく国営の『環球時報』、さらには地方紙も数日おきに報じるなど異例の扱いとなっている。
CCTVによると、「朝鮮中央通信」は、朝鮮労働党創建75周年に恩赦を実施することを決定した。恩赦は、最高人民会議常任委員会が7月30日に関連法案を発布。法案は、朝鮮労働党創建75周年に際し有罪判決を受けた者に恩赦が与えられるとなっている。
発布された恩赦は、9月17日に実施されるとのこと。北朝鮮中央、地方政府や各機関は釈放された者への就業や生活支援の対策を講じることになると報じた。
北朝鮮は、9月9日が建国記念日。10月10日は朝鮮労働党創建記念日とされ、4月15日の太陽節、2月16日の光明星節を除けばもっとも重要な祝日となる。
中国関係筋は、北朝鮮観光の年内再開は厳しく、来年再開となる見通しを明らかにしている。しかし、10月10日の創建記念日は招待者向けにマスゲームを実施する可能性があることも示唆している。
恩赦がほとんどない中国が報じる意図
それにしても本件を中国が大きく取り上げる意図はなんであろうか。
恩赦は元々古代中国を起源とするものだ。しかし、現代中国ではほとんど実施されていない。または、非常に制限された恩赦が実施されるも中国国内ではあまり報じられない。
日本では、恩赦が国民主権や法治国家と矛盾し、時代錯誤であるなどの意見も根強い。最近では2019年に天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に合わせて実施されている。
共産党と労働党の中朝連帯アピールか?
中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」の百度百科(大赦)を見ると、
中華人民共和国は、1954年に憲法に一般恩赦と特別恩赦を規定。一般恩赦は全国人民代表大会で決定。特別恩赦は、全国人民代表大会常務委員会で決定されるとした。
1975年、78年の憲法改正で、一般恩赦は事実上廃止し、特別恩赦のみ残る。中国の憲法第67条、第80条で、全国人民代表大会常務委員会で恩赦を決定し、国家主席が恩赦令を発布することが決められている。
殺人などの重犯罪者は恩赦対象には含まれず、加えて中国政府が国家の治安を脅かす重罪と位置づける国家分裂行罪やスパイ罪なども恩赦対象から除外されている。
当然ながら7月1日に施行された香港国家安全維持法(国安法)逮捕者も含まれないだろう。
中国における近年の恩赦も北朝鮮同様に中国共産党の創建日や建国記念日に実施されることが多い。中朝共産党の連携、兄弟国感を示すために恩赦が実質的にない中国で取り上げているのかもしれない。