2020年1月~4月の中朝貿易は昨年同期比で-66.6%
2020年1月~4月の中朝貿易は昨年同期比で-66.6%
北朝鮮は貿易の90パーセント以上を中国に依存しているため、北朝鮮にとって中朝貿易が物流の安定や外貨獲得の要となっている。
だが、北朝鮮は新型コロナウイルスの流入対策のために今年1月から国境を封鎖し物流を制限していることから、現在、中朝貿易は非常に低迷している。
中国海関統計によると、2020年1月から4月までの朝中貿易の総額は2億5055万ドルであった。前年同期(2019年1月~4月)は7億5099万ドルであり、同期比でマイナス66.6パーセントと大きく減少した。
このうち、北朝鮮の対中輸出(2020年1月~4月)は1349万ドル。前年同期は7億7311万ドルであり、同期比マイナス82.5パーセントとなった。輸出商品を個別に見ていくと、輸出の上位を占めているかつらや時計類が大きく減少している。
対中輸入も大幅減。プラスティック製品や穀物、肥料が大きく減少
続いて輸入を見ていくと、北朝鮮の対中輸入(2020年1月~4月)は2億3706万ドルとなった。前年同期は6億7368万ドルであり、同期比マイナス52.7パーセント。
個別商品で見ると、プラスチック製品や穀物の輸入量が減少している。
特に北朝鮮では近年、比較的に安定した食糧輸入量を維持していたことから、米やトウモロコシなどの輸入減少にすぐに対応できずに国内の物流にも影響が出ているとみられる。
ちなみに、肥料の輸入量も大幅に減少しているが、これについては今後、検証が必要である。
北朝鮮では5月に金正恩委員長が出席したことで注目が集まった肥料工場「順川リン酸肥料工場」の完工式を行っている。
同工場の稼働により肥料不足が解消されるのであれば、肥料を輸入に頼る必要はなくなるだろう。
北朝鮮は経済難を覚悟の上で新型コロナ対策による国境封鎖を継続
今後、北朝鮮が防疫による制限を緩和せず、この期間(1月~4月)の減少率マイナス66.6パーセントが続けば、2020年の貿易総額はおおよそ9億3000万ドル(推計)となる(2019年は総額27億8900万ドル)。
これは2003年前後と同水準であり、このままでは外貨獲得も滞るなど北朝鮮経済に深刻な影響が出ることは必至である。
ロシアが5月下旬に「北朝鮮への石油輸出を再開した」と発表するなど一部動きも出ているが、いまだ限定的である。
中朝貿易関係者の間では「6月中旬以降に中朝貿易が再開される」という噂も出ているが、北朝鮮は経済よりも新型コロナウイルス流入対策および自国民の保護を優先していることから、貿易の再開は慎重に検討していくものとみられる。
八島 有佑