かつら・ウィッグビジネスが絶好調
かつら・ウィッグビジネスが絶好調
「ほら、この積み上がった荷物を見てくださいよ」と、半ば諦め気味に説明してくれたのは、中国丹東で貿易業を営む朝鮮族の女性Jさん。
丹東市内の事務所を訪れたら室内を麻袋のような荷物が大量に占拠していた。いずれも2月以降に北朝鮮へ輸送する予定だった素材だという。新型コロナウイルスの影響で中朝貿易が停止されているため送れずにいるのだ。
Jさんは、北朝鮮でかつらやウイッグを製造して中国の商社を通じて世界中で販売するビジネスを行っている。ここ数年、業績は右肩上がりで、今年も昨年以上の生産個数を見込んでいた。
Jさんは、主に頭部全体を覆う全頭タイプのかつらやウィッグを手掛けており、かつらを作る材料一式を丹東から北朝鮮へ輸送し、平壌郊外の工場で主に人工毛の編み込み作業と最終仕上げを行い再び丹東へ輸送してパッケージ化して中国製として世界中へ販売しているという。
製品写真の商標を見るとかつらは”中国製”となっていた。
国連制裁に抵触せず?人工毛など素材一式を中国から送る
この委託生産は国連制裁に違反していないとJさんは胸を張る。しかし、過去にアメリカ企業が中国から輸入したつけまつげに北朝鮮製が混ざっていることが判明し輸入、販売元のアメリカ企業がカリフォルニア州がから高額罰金を課せられたことが報じられているので、かつらやウィッグも同様に制裁対象の商品だと考えられるというのが多くの研究者たちの見立てだ。
ここ数年、北朝鮮では、かつらビジネスが盛んだという記事を見かけるようになったが、使用されているのは人工毛ではなく人毛ではとの疑念も挙がっていた。今回、Jさんへ確認すると、かつらの原料となる人工毛も含めて素材は一式中国から送っているという。他の同業他社も同じだと話す。
かつら生産では人工毛の編み込み作業がもっとも困難な作業で、作業をする北朝鮮の女性たちは手先が器用なので品質が高く、何より人件費が丹東と比較しても10分の1くらいだという。実際には、輸送コストや通関費などが加算されるが、それでも丹東で完成させる半額以下で生産できるとJさんは話す。
このままでは在庫で潰れそう
2月から中朝貿易が停止しているためJさんは日本円で1億円近くの材料が丹東から送れずにいる。中国国内で生産することも考えたが、丹東や中国では北朝鮮で生産する品質のものは現在の販売価格では到底作れないそうだ。
生産しているかつらやウィッグはアジア人向けの黒髪以外にも白人、黒人向けなど男女問わず多様なニーズに応じていて、最近はヨーロッパの白人向けブラウン系のかつらが好評とのことだ。
Jさんはこのままだと在庫で潰れそうなので、一日でも早く新型コロナ禍が収束し北朝鮮への輸送が再開してほしいと話す。