マレーシア政府の政治パフォーマンス
金正男殺害事件で閉店した北朝鮮レストラン高麗館 マレーシアと北朝鮮の関係の今(2/3)の続き。
金正男氏殺害事件をめぐりマレーシアと北朝鮮の関係は悪化し、マレーシア地元メディアでは断交やむなしという論調が飛び交っていたが、結果的には政治判断で曖昧にされてしまった。
クアラルンプールでエステ店を経営する日本人によると、スタッフや顧客のマレーシア人たちは、マレーシア政府は強い口調で北朝鮮当局を非難しているが実際は何も行動を起こしていないので国内や国外へ向けてのパフォーマンスだろうと話していたそうだが、その通りになっている。
「ほとんどのマレーシア人は北朝鮮がどこにあるかも正しく理解しておらず興味がある人も聞いたことないと話しています」(クアラルンプール在住の日本人経営者)
世界初にて唯一の相互ビザ免除国だったマレーシアと北朝鮮
マレーシアは北朝鮮と1973年に国交樹立してからの友好国の1つとされており、2009年に世界初のビザなし相互渡航を実現させたのもマレーシアとなる(事件後停止)。また、マレーシアには北朝鮮への中継貿易をする企業が多数存在し、なぜか北朝鮮国内で売られている「ポッカ」の缶コーヒーなど一部の日本製品は、マレーシアを経由して輸入されていると言われる。
さらには武器製造の部品売買で2か国の政府は密接な連携をしていることも判明しているなど、両国には切っても切れない関係が存在していることもあり、表面的なパフォーマンスを演じていたのではとの見方もある。
冷酷な政治判断で両国関係は元の鞘に?
連日のようにテレビ中継に登場していた北朝鮮大使館は今も業務をしている。事件当時、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」聞き慣れない外交用語で、マレーシア政府が北朝鮮大使を追放したこともメディア発で話題となった。その後は、2019年3月11日に大使館の壁に自由朝鮮の関与を疑わせる落書きが見つかったことが報じられたくらいで、現在は日本でもマレーシアでもマスコミへ登場することはほとんどない。
金正男氏殺害事件後、平壌のマレーシア大使館関係者を帰国させていたマレーシア大使館は、2018年に再登板したマハティール首相が2020年春までには平壌のマレーシア大使館を再開させて北朝鮮との国交関係を正常化させる意向を表明していた。しかし、今回の新型コロナ騒動で延期されているとみられる。
新型コロナウイルスの世界的な流行が終息し、世界での観光需要が復活してきたら、いつの間にかマレーシア人と北朝鮮人のビザが再び相互免除されて、クアラルンプールから平壌までのチャーター便も復活しているかもしれない。
もしこのまま政治判断によって金正男氏殺害事件が闇に葬り去れ両国関係が元の鞘に戻るのであれば政治とは実に冷酷なものである。
事件当時、北朝鮮レストラン高麗館とともに連日中継された北朝鮮大使館。