ほぼ経済活動を正常化させた中国
金正恩委員長が習近平主席へ新型コロナウイルスへ勝利したことを祝う口頭親書を送ったことが日本時間8日昼過ぎに中国メディアでも日本と同じ内容で報じられた。
米トランプ政権が中国への攻撃を強める中、新型コロナウイルス発生国である中国では2月末には各地の工場生産を再開させ、飲食店やホテル、ショッピングモール、レジャー施設なども3月末から順次、再開されている。
エンデミックを起こした武漢でも都市封鎖は解除されて、店内飲食も解禁されたと在住者から報告を受けている。
現在、中国で新型コロナウイルス対策で目を光らせているのは海外から帰国者で、特にロシアから陸路帰国する中国人の感染者が多く発生しているとのことでハルビンなど黒竜江省で警戒が強化されている。
貿易商の人的往来再開か?
武漢がある湖北省から1500キロメートルほど離れる遼寧省丹東では、日常的な制限はほぼ解除されているものの日本同様、観光、旅行業などは後回しにされており再開時期は見通せていない。
当然ながら中国人向けの北朝鮮ツアーやビザなしで行ける新義州への日帰りツアーなども再開されていない。
しかし、丹東の貿易関係者によると、今月中旬にも中国人貿易関係者の人的往来が再開されるとの話が挙がっており、関係者は一様に期待しているとのことだ。
「(北)朝鮮へ入ったら4週間隔離されるのは勘弁してほしいので、隔離されないことが確認されたらすぐにでも取引を再開したい」(中国人貿易商)
北朝鮮が2月1日に中国との国境封鎖以降も定期的な物資搬入は『労働新聞』などでも報じられている。
貿易関係者の人的往来再開を熱望するのは中国からの輸入に大きく依存する北朝鮮側と思われがちであるが、実は丹東の貿易商や丹東当局もかなり切羽詰った状況に追い込まれているようだ。
というのも国境の丹東では、北朝鮮との貿易を生業としている漢民族や満州族など朝鮮族以外でも多く、北朝鮮との貿易が止まることは彼らにとっても死活問題だからだ。
丹東経済は北朝鮮と一蓮托生
丹東経済は国境ツアーなどの観光業も含め北朝鮮と一蓮托生状態にあるため、長期間、中朝国境が封鎖されることは丹東経済へダメージを与え、さらに交易も滞ると鴨緑江近くのマンション価格暴落へと波及していくからだ。
また丹東当局としては、北朝鮮との貿易が止まったままになると水面下での密貿易が横行するために実態把握が難しくなり頭を抱えることになる。現時点でも密貿易が盛んに行われているが、厳しく取り締まると中国人たちの不満が丹東当局へ向けられることになるため慎重に対応しているとみられる。
いずれにしても中朝貿易関係者の人的往来が再開されても関係が悪化しているアメリカを始め国際社会の目を意識して対外的には大々的に報じることはないだろう。しかし、丹東経済や内政的には非常に重要なことであるので、今ごろ関係者たちが再開へ向けた根回しに奔走している姿が目に浮かんでくる。