日本人もベトナム入国時に新型コロナウイルス陰性証明書が必須に
新型コロナウイルス「COVID-19」の影響で東南アジア各国も経済的な打撃が大きい。ベトナムもまた悪影響を受けている国の1つだ。特にベトナム政府は、東南アジアの中でも防疫措置が厳しい国で、3月18日からは欧州27か国からの入国を禁じ、かつビザの新規発給も1か月間停止している。
日本人のベトナム入国に関しては、15日以内の滞在であればビザ免除が継続されるものの、日本からの入国者に対しては新型コロナウイルスの感染が陰性であることを証明する健康診断書を入国時に提示することを義務付けた。しかし、この措置の実施を発表した段階ではその「健康診断書」がどういったののかは明示されておらず、実質的に日本人はベトナムに入国できなくなったという見方もある。
中国からの全フライト停止に続き3月7日から韓国便も全便停止で韓国人激減
また、ベトナムでは入国者に対してオンライン、および、航空機内で配布される健康宣言書の提出が強制されている。航空会社の中にはオンライン送信が完了していないとチェックインもできない。
さらに、これらに先駆けて、ベトナムは特に中国と韓国に対して強硬な手段を取っている。両国からのフライトがすべて停止(中国便2月1日から、韓国便3月7日から)となっており、中国は陸路で接しているものの、韓国からは事実的に渡航ができない状態である。
韓国人の入国者数は、ベトナム文化・スポーツ・観光省発表の統計によると2020年1月は46万8423人、同2月は32万1967人。わずか1か月で10万人以上が減ることになった。3月はさらに減少する見込みだ。
サムスンのスマホ生産拠点。ベトナム経済は韓国企業から大きな影響を受けている
さらに、韓国人はベトナムに暮らす人も多い。その数はおよそ20万人と言われ、在越日本人数のおよそ10倍だ。日本以外に日本人が多い国に同じ東南アジアのタイも入っているが、その数はおよそ7万5000人。その数字すら上回る。
これだけ在越韓国人が多いのは、韓国の大手メーカー各社がベトナムに拠点を置いているからだ。特に大きいのが「サムスン」で、世界中に出回るスマートフォンの半分がここで作られているという。そのため、サムスン・ベトナムの輸出量は、ベトナムの総輸出量の25パーセントにもおよぶ。ベトナム経済は韓国企業からの大きな影響を受けることになる。
ベトナム人は歴史的背景から、総じて中国本土の人々を嫌っている傾向にある。韓国人は近年だとK-POPのアイドルグループなどの人気が高く、また家電や自動車は韓国製を利用することから、ベトナム人の対韓感情は比較的良好である。ただ、韓国人の中には自社のベトナム人従業員に差別的、暴力的に接することもあり、嫌韓感情がくすぶっているのも事実である。
社会主義国は決定・実行が早く突然出国できなくなることも
ベトナム政府は経済的に頼り切っている韓国ではあるものの、自国民を守るため、新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えてしまった韓国に対しては強硬な手段の防疫対策に打って出ている。
今後、これらの防疫措置をさらに広い範囲に適用する可能性もあり、日本もその対象になる可能性だってある。ベトナムは社会主義国なので、決定が早く、実行も早い。入国できないならまだしも、出国できなくなることもありえるので、ベトナムへの渡航予定がある場合は、常に動向を確認しておくべきである。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレスなど。
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