噂レベルの話が先行する北朝鮮の新型コロナウイルス情報
日本や韓国で感染を拡大させている新型コロナウイルスによる新型肺炎患者がいまだに0人だと国内外へアピールする北朝鮮。4月の韓国総選挙へ脱北者では初となる小選挙区での出馬表明した元駐英公使だった太永浩(テ・ヨンホ)氏が19日、ソウルで行われた外国人特派員協会にて、「世界保健機関(WHO)」も正しい情報を把握していないだろうとの見解を示している。
WHOの事務所が平壌にもあることは、国際人権団体関係者などが訪朝したときに訪問していることが報じられており、いちおう平壌にもWHOの事務所があることは間違いない。
北朝鮮国内での新型コロナウイルス感染者の有無については、韓国の脱北者系団体を中心に主張していることをソースにして韓国メディアが盛んに発信しているように見受けられる。しかし、平壌にあるWHOですら確認できない状況であれば裏取りは難しく、エビデンスが乏しい人づての噂話に近い脱北者系団体の主張をそのまま鵜呑みにするのは危険であり慎重に検証する必要がありそうだ。
新義州が都市封鎖?噂が飛び交う丹東
噂話と言えばこんな情報も入ってきている。北朝鮮と国境を接する中国丹東の朝鮮族によると、2月21日に中朝国境の新義州が都市封鎖されたという話が流れているとのこと。
しかし、2月に入ってから中朝交易や人的往来も事実上ストップしているため実際に確認されたものかは定かではない。
都市封鎖の噂を聞いた後に、丹東の旅行会社や北朝鮮との交易をする貿易商などを通じて北朝鮮企業にも確認をしてもらうも「新義州が封鎖されたという話は聞いていない」とのことだった(隠しているのか、現在、北朝鮮人も帰国できずにいるので本当に知らないかは不明ではあるが)。
中朝で異なる「都市封鎖」の定義
そもそも都市封鎖というと先月23日から行われている新型肺炎発生地の武漢などをイメージすると思う。高速道路や一般道を封鎖し、空港、駅を閉鎖し、バス、地下鉄もほぼ運休させ、住民たちの外出も厳しく制限するという現代の21世紀ではまったく現実味がない強硬策を実施している。そう、これはまるで中世のヨーロッパのように街全体を城壁でぐるりと取り囲み人や物の出入りを数か所の門で厳しく管理している状態が今の武漢だろう。
加えて、中国と北朝鮮では“封鎖”の定義が異なっていることも指摘しておきたい。元々北朝鮮は、国内の移動の自由がなく、各所に検問所を配置して管理している。中国も90年代までは国内移動制限が存在し、今の北朝鮮のように各所に検問所が配置されていた。
(続く)