韓国がGSOMIA破棄を明言した理由は日本の輸出優遇措置見直しって本当か?

韓国がGSOMIA破棄を明言した理由は日本の輸出優遇措置見直しって本当か?

GSOMIA破棄を撤回 出典『韓国経済新聞(韓経ドットコム)

韓国がGSOMIA破棄を明言した理由は日本の輸出優遇措置見直しって本当か?

 2016年に日本と韓国の間で締結されたGSOMIA(軍事情報包括保護協定=ジーソミア)。

 軍事情報を互いに提供する際に、第三者へ情報が漏洩しないよう保護する協定であることから、GSOMIAを結ぶ国々は、同盟国など緊密な関係を持っていることがほとんどだ。有効期間は1年で、一方の国が毎年8月24日までに破棄を通告しない限り自動的に延長される仕組みで、2019年までの3年間は自動的に更新されてきた。

 しかし、2019年8月22日に韓国政府はGSOMIAの破棄を発表している。

 この背景には、日本政府が韓国を貿易管理上で優遇対象としているホワイト国(現在はグループA)から除外したことが一因となったと韓国は主張する。

 韓国は財閥を中心とする大企業や貿易に対する依存度が大きい。そのため、日本政府が実施した韓国に対する輸出優遇措置の見直しなど一連の措置は、直接、韓国経済にダメージを与えることになる。そういった日本への不満がGSOMIA破棄の原因に挙げられた。

文在寅大統領の政権公約だった日韓GSOMIA破棄を土壇場で撤回した背景

 2019年11月23日午前0時に失効が迫っていたGSOMIAだったが、韓国政府は11月22日に破棄通告の効力停止を発表した。GSOMIA破棄の停止は条件付きとなり、日本が韓国と輸出規制問題の解決に向けて協議している間は効力を停止するというものだ。

 日本の明確な輸出規制措置の撤回がなければ、GSOMIAを終了するとしていた韓国のこれまでの方針とは異なっている。

 これまで、GSOMIA破棄に向いていた韓国、方針を転換した理由にはアメリカが関係していると見られている。失効期限が迫る中、マーク・エスパー国防長官を始めとしたアメリカ政府高官が相次いで訪韓し、GSOMIAの延長を求めた。

 アメリカ政府は、従来の防衛費分担金の5倍(ドル基準)に達する50億ドルを要請しており、在韓米軍の撤退を示唆している。こうした状況の中で、アメリカが韓国と日本に提案したGSOMIAの維持要求を無視するのは韓国としてリスクがあると感じたのだろう。

 GSOMIAの破棄が現実になれば、アメリカは情報共有がしづらくなり、メンツをつぶされる形になるので韓国に対する風当たりはますます強くなることが予想される。このようなアメリカの圧力なども考慮して、掲げていたGSOMIA破棄の撤回を決断したとみられる。

 もっとも文在寅大統領は、大統領選挙での政権公約に日本とのGSOMIA破棄を謳っており、輸出規制問題はちょうどよい口実だったので、ことさら強調して都合よく政治利用しただけとの専門家も見立てもある。

GSOMIA維持で憤慨する北朝鮮と中国。どうする文政権

GSOMIA維持で憤慨する北朝鮮と中国。どうする文政権

出典 Natig Sharifov [Public domain], via Wikimedia Commons

GSOMIA維持で憤慨する北朝鮮と中国。どうする文政権

 GSOMIAの破棄は一時撤回されたものの、日韓両国は輸出規制問題の解決に向けた難しい交渉を続けることになる。

 また、日韓の隔たりを大きくした2018年10月の徴用工判決をめぐる立場の違いを解決していかなければならない。加えて、こうした日本との交渉以外にも、北朝鮮や中国との交渉も進めていく必要がある。

 北朝鮮や中国は、GSOMIA破棄により利益を得る側であり、今回のGSOMIA延長は、両国にとって好ましくない結果だ。そのため、韓国の中朝との交渉はこれまで以上に大変なものとなることが予想される。

 日米に配慮すれば、中朝との関係が遠のく事態となっており、2020年、今後の韓国の外交交渉は一筋縄ではいかないだろう。

千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。

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