20年ほどで2度の通貨危機に見舞われている韓国
20年ほどで2度の通貨危機に見舞われている韓国
1997年7月より、タイを震源としてアジア各国が影響を受けたアジア通貨危機により、各国に自国通貨の大幅な下落や経済危機をもたらした。
韓国も通貨危機の影響を大きく受け、世界的な格付け会社「ムーディーズ」を始めとして他の格付け会社も韓国の国家信用格付けを下方修正した。影響はそれだけに留まらず、多くの企業の倒産や株価の暴落、財閥の破綻などを招き、韓国中央銀行の外貨準備が減少した。こうした事態を受けて、韓国政府は「国際通貨基金(IMF)」へ救済を要請、これにより韓国はIMFの管轄となり、IMFが韓国の経済に介入し一部の財閥解体などが実行されている。
2008年にはアメリカのサブプライムローンの不良債権化などをきっかけにサブプライムローン問題が発生。アメリカを震源として世界的な金融危機に陥り、韓国も影響を受けている。
その当時、韓国は、資本収支、経常収支ともに赤字の状態であり、金融危機による不況が追い打ちをかけ貿易赤字の状態に陥っていた。そのため、韓国の通貨であるウォン安が進行し、一時期は1ドル=1500ウォンを突破、株価も暴落するなど通貨危機となったものの日米からの通貨スワップの助けを借りて乗り切っている。
このように韓国は2度の通貨危機をこれまでに体験している。
韓国の株式・債券が外国人投資家から売られている現状
韓国銀行が2019年12月10日に発表したデータによると、11月の外国人の韓国株式、債券投資資金は39億6000万ドルの純流出となった。この金額は昨年10月以降で最も大きな規模となっている。株式市場では8月からの4カ月連続で外国人投資家の売り越しが続くなど、外国人資金流出が進んでいる状態だ。
こうした売りが続いている背景には、韓国の景気悪化、企業の業績不振などの理由があると見られている。そのため、韓国に対する投資リスクを懸念する外国人投資家が売りの動きを見せているのだろう。
今後、景気や企業の業績が改善しなければ、さらに韓国株式、債券は売りに出されるため外国人資金の流出は加速し、経済失速の要因となるとみられる。
韓国企業の業績不振が続き、元々弱い内需も縮小傾向
韓国企業の業績不振が続き、元々弱い内需も縮小傾向
韓国の半導体製造会社として有名な「SKハイニックス」では、営業利益が前年同期に比べて93パーセント減少するなど韓国経済を支える企業の業績悪化が深刻だ。液晶分野で世界大手の「LGディスプレイ」は営業赤字に陥っており、韓国がこれまでシェアを向上させてきた造船分野でも業績悪化が進行している。
それだけに留まらず、航空会社全6社の最終損益が赤字となるなど主力産業である半導体だけではなく、多くのセクターで業績の悪化が鮮明化している。
また、内需に関しては、文在寅政権が発足した2017年は3.9パーセント増加していたものの減少傾向となり、2019年第3四半期は0.7パーセントの減少に。
韓国銀行が発表している国内総生産(GDP)に関しても、年間の成長率が2パーセント台を割り込む可能性が見込まれるなど韓国経済は厳しい状態と言えるだろう。
経済状態が改善されなければ、過去の通貨危機の再来と呼ばれる「経済破綻」級の事態を招く可能性があるため、年末から2020年初頭の韓国経済の動向を注視していきたい。
千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。