賃貸より分譲マンション購入傾向が高い韓国人
日本人渡航者の多いタイだが、実は韓国人の渡航者数の方がやや多い。タイへの入国の理由は日本人と同じようなもので、観光のほかビジネス関連の入国も少なくない。同時に長期滞在者も増えていて、ホテルではなくコンドミニアム(マンション)などで暮らす韓国人がいる。
バンコクに事務所を構える日系の不動産仲介業者によれば、韓国人は賃貸よりも分譲マンションなどを購入する傾向が強いという。不動産投資ブームの都心では物件価格の高騰が進み、立地条件がいい場所になると日本円で億を超える部屋もある。そのため、富裕層とはいえない韓国人長期滞在者はあえてバンコク郊外の分譲マンションを購入しているようだ。
日本人、欧米人、中国人のロケーション選びに国民性が
観光のルートや飲食店の選び方などに国民性が表れるが、物件の選び方にもその違いがあると、別の不動産仲介業者は話す。たとえば、日本人は、交通の便や日本人コミュニティーがある地域を選ぶなど、利便性を重要視する傾向にある。欧米人は自分の好みにこだわり、奥まった場所であっても、あるいは近隣にパブやディスコなどがあって騒々しい場所であっても、自身のこだわりに忠実だという。
中国人も比較的コミュニティーが色濃いエリアを選ぶようで、バンコクなら下町にあたるラチャダーピセーク通りのある小路に急増していて、10年ほど前から新中華街が形成されつつある。しかし、タイは1800年代から第2次世界大戦直後まで流入していた中国移民が多かったことから、全土的に中華系住民がいて、どこでもなんらかしら中国語や中国由来の文化が浸透しているため、どこでも暮らしやすそうな印象がある。
便利になりつつある郊外に目をつけて移住する韓国人
近年、急増している韓国人は、製造業か飲食店などの自営業者が多いこともあって、分譲マンションの価格の関係も含めて、郊外に住む人が少なくない。製造業ならバンコク郊外、そして高速道路で1、2時間の距離に工業団地が点在しているので、元々郊外の方が通勤しやすいというメリットがあった。
また、最近は超大型の商業施設が郊外にできることもあり、集客力は必ずしもバンコク中心地が有利とは限らなくなった。一般的な飲食店向けの物件も郊外の方が安いこともあり、あらゆるタイプの韓国人にとって郊外物件の方が理に適っているのだ。
たとえば、バンコクに隣接するサムットプラカン県ならスワナプーム国際空港も近く、工業団地がいくつもある。欧米のインターナショナル校も点在し、大きな商業施設も複数ある。都心に出なくても生活に不便はない。そのためもあってか、単身者ではなく家族で郊外に暮らす韓国人世帯の方が多い。日本人世帯がまったくいないコンドミニアムでも韓国人家族は何組もいて、子どもが小さく、専業主婦として滞在している韓国人女性も同郷の友人、知人ができやすい環境がある。中国や台湾系の世帯もそういったコンドミニアムに見かけるが、アジア系では韓国人世帯の数が圧倒的だ。
市街地が郊外へ拡大するバンコク。韓国人は先見の明があり?
現在はバンコク都が公共交通機関の発達に力を入れており、サムットプラカン県や、同じくバンコクに隣接するノンタブリ県などに向かって高架電車などの工事が進んでいる。これによって、10年前に比べると日本人の居住者も郊外に増えつつあるが、そういった路線が開通する以前に韓国人は移住してきているので、バンコクに暮らす韓国人は、やや先見性があるようにも見える。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
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