外国ものは欧米が主流で中国が続く。日韓では日本が若干優勢か
タイ国内のDVDショップでは映画やドラマのDVD、音楽CDが販売される。大半のショップで3分の1くらいがタイのもの、それ以外は海外の映画などになる。海外ものの映画やドラマの棚においては、6、7割が欧米の、特にアメリカから入ってきたものと言っても過言ではないだろう。
そして、残りの棚に日本、中国、韓国の映画やドラマが置かれているといった印象である。店員に聞いたり、実際にショップを見ても、圧倒的に中国の映画が多い。タイは中華系も少なくない。移民でタイに来た中華系タイ人はすでに3世以降の世代となっていて、彼らは東南アジア諸国の移民の子孫と違い、中国語をあまり話さない。しかし、オンラインではなくソフトで映画鑑賞をする人物像が多少高齢であることを考えると、まだ彼らは中国語を母国語としている可能性もあり、そういった人がターゲットになっているのかもしれない。
残りの日本勢、韓国勢では、やや日本勢が優勢に見える。映画にしてもドラマにしても、日本のものが多いようだ。日本と同じで、タイも韓国人気が顕著なのはK-POPの方で、韓流映画やドラマのファンはいまだマニアックな存在とも言える。楽曲CDなどの棚を見れば圧倒的に韓国ものが優勢ではあるが、特に映画はわずかながら日本の方が人気があるようだ。
オンライン配信が増える中でいまだに残る海賊版DVD
タイは日本のようにビデオデッキがあまり普及しなかったため、数十年前から2000年代初頭まで、自宅でソフト化した映画やドラマを観ることはほとんどなかった。その後、VCDが流通して安価に映画などが入手できるようになり、この10年くらいでDVDやブルーレイが利用されるようになった。
しかし、ここ数年でタイもインターネット環境が格段に向上し、オンラインで映画などを鑑賞する人が増えたため、DVDショップはかなり減ってきている。
こういった環境だったこともあって、ソフト化した作品を手にする機会がほとんどなかった一般的なタイ人が著作権侵害などに問題があることを理解し始めたのは非常に遅く、ごく最近と言える。タイにも著作権法などがあり、映画などの海賊版DVDは違法になる。政府も取り締まりを行うものの、本腰を入れていないのかイタチごっこが続いており、以前より激減したとはいえ、いまだに海賊版のDVDを扱うショップも存在する。
海賊版は日本ものに人気が集まる…
海賊版DVDショップでもやはりハリウッド映画などのラインナップが多いが、アジアもので見ると正規店の中国勢優勢よりは日本の映画やドラマが強いように見受けられる。韓国ドラマや映画は衛星放送などでも放送される機会が多いので、あまり目にしない日本映画などが注目されるのかもしれない。
とはいえ、海賊版ショップも韓国ものの勢いを無視することはできず、店の前を通る人に「韓国の映画とドラマがありますよ!日本のもあります!」と声をかけている。ラインナップは日本の方が多いが、韓国ものを呼びかけのきっかけに使っていた。
いずれにしても韓国エンタメは、K-POPの異様なまでの強さは疑う余地はないものの、少なくともタイでは映画やドラマは日本製とそれほど大差がないようだった。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』、近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
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