大型旅客船や浚渫機材は用意してほしい
南浦が外貨稼げず大ピンチに 中国企業へ投資を呼びかけ打開を模索(1/2)の続き。
「泊まれるホテルがないことも問題ですが、もっと大きな問題は、提案に出てくる大型旅客船は、南浦側では持っていないので中国側で船舶会社あたりからチャーターしてほしいや、西海閘門も今のままでは通過できないので、浚渫するための機材を用意して中国から持ち込んでほしい、さらには、それらの資金を投資する中国企業を募集してほしいとのことでした。さすがに現状では、リターンがまったく見込めない話なのでその場で提案に賛同する企業はありませんでした」(天津の旅行会社担当者)
南浦特別市としては、平壌から入国の観光客が訪れるだけでは外貨が1ドルも稼げないので、平壌の政府関係部に外貨支援を申し出たようだが、「自分たちで知恵を絞って稼ぐように」と突き返されたと南浦の関係者は苦しい胸の内を明かす。
自力更生の精神で組織内でも競い合う
自力更生の精神で組織内でも競い合う
北朝鮮では、都市ごとや旅行会社ごと、同じ組織とされる企業でも支社ごとで独立採算制で稼がせる内部競争が盛んに行われている。各国にある北朝鮮大使館や領事館が自分たちで事業をやって稼ぐ必要があることは、脱北した元英国大使館で公使を務めた太永浩氏の著書でも触れられている。
各国の北朝鮮大使館や領事館が稼ぐ手段として展開していた事業の1つが北朝鮮レストランであり、KWTでも報じたベルリンなどのホテル事業と言われている。まさに「自力更生」の精神で稼ぐ必要がありそうだ。
鴻祥集団や馬暁紅の二の舞を恐れる中国海運会社
鴻祥集団や馬暁紅の二の舞を恐れる中国海運会社
さらに現実的な話として、中国の船舶会社が旅客船を北朝鮮へ貸し出したり、浚渫に必要な大型機械をチャーターして北朝鮮へ運ぶことも現状は難しいという。
「現在、中国の船舶会社や海上輸送をする国際運送会社は、世界的なルールに則り米ドル決算をしています。そのため、何をどこへ運んだなどはアメリカには丸見えとなっており、大型客船を貸し出したり、工事用の機械を運搬したりするとすぐにアメリカにバレてしまいアメリカから個別に独自制裁を受けてしまったら会社自体の存続が危ぶまれるので、どの会社もそんな危険な橋は渡らないでしょうね」(天津の海運会社)
現在も軟禁が続くされる馬暁紅氏が代表を務めていた「鴻祥集団」の二の舞はごめんということだろう。
鴻祥集団は、北朝鮮へ核開発物質を不正に輸出した嫌疑で2016年にアメリカから鴻祥集団と馬氏らへの狙い撃ちで独自制裁を受けている。
中国国内向けには北朝鮮への密貿易容疑ではなく、脱税容疑とされているが、馬氏の軟禁が伝えられてから3年以上経過した現在も馬氏の軟禁が解かれたという情報は報じられていない。
南浦特別市の自力更生での悪戦苦闘はしばらく続きそうだ。