東京ヴェルディ(J2)所属の28歳
東京ヴェルディ(J2)所属の28歳
今年10月、29年ぶりに平壌で行われた北朝鮮と韓国のサッカー代表戦(FIFAワールドカップ2022カタール大会予選)は、まさかの無観客試合、さらには前代未聞のライブ中継なしと、アジアだけでなく世界のサッカーファンを驚かせた。
話題となったその一戦にスタメン出場した在日朝鮮人Jリーガーがいる。J2リーグの東京ヴェルディに所属する李栄直(リ・ヨンジ)選手だ。現在28歳。サッカー北朝鮮代表選手として試合に出場するのは今回が初めてではなく、2014年の代表初招集からコンスタントに選ばれ続けている。アジアの頂点を決める「AFCアジアカップ」には2大会連続(2015年、2019年)で出場するなど評価を高めている。
大阪生まれ、大阪育ちの在日朝鮮人4世
大阪生まれ、大阪育ちの在日朝鮮人4世
大阪生まれ、大阪育ちの在日朝鮮人4世。在日朝鮮人が多く住む大阪・生野にあるサッカークラブで小学生の時にボールを蹴り始めたのが原点になる。このクラブは、かつて日本代表で10番を背負ったラモス瑠偉氏と旧知の間柄という在日朝鮮人の金尚益(キム・サンイク)氏が立ち上げたクラブで、当時のチームメートには現浦和レッズ(J1)所属の杉本健勇選手(元日本代表)がおり、互いに切磋琢磨していたことで知られている。
その後、大阪朝鮮高級学校、大阪商業大学を経て、2013年に徳島ボルティス(J2)に入団しプロ生活をスタート。2014年4月にJリーグ初得点を記録して以降は、V・ファーレン長崎(2015年)、カマタマーレ讃岐(2017年)と渡り歩き、2018年から現在の東京ヴェルディに活躍の場を移している。
「日本サッカーを知る」代表チームに不可欠な存在
身長187センチメートル、体重75キログラムの恵まれた体格を持ち、守備的なミッドフィルダーやディフェンダーを主戦場とするが、ときに得点能力をかわれ攻撃的なポジションを担うこともある。
北朝鮮のサッカーと言えば、臆することなく体をぶつけてボール奪う、フィジカル重視が伝統だが、そこにアジア屈指の強豪国である日本のパスサッカーを知る技術力を還元できるメリットは大きいだろう。平壌での韓国戦後、11月に行われたトルクメニスタン、レバノンとの敵地での2連戦にも引き続き招集されており、チームに不可欠な存在のようだ。
「代表チームに選ばれることは光栄なこと。毎日の積み重ねが評価されているのだと思う」。その先には、プロサッカー選手なら誰もが夢見るワールドカップへの出場を見据えている。来年2月には29歳になる。年齢を考えるとこれがラストチャンスになるだろうか(ワールドカップは4年に1度)。在日朝鮮人の熱い期待を背に、“夢の舞台”への挑戦は続いている。
VERDY TV/李栄直選手が2022 FIFA ワールドカップ・アジア2次予選、朝鮮民主主義人民共和国代表メンバーに選出!
北 幸多(フリーライター)