日本人拘束騒動で話題になった平壌の外港「南浦」

日本人拘束騒動で話題になった平壌の外港「南浦」

大同江の河口に建造された西海閘門。出典 David Stanley [Public domain], via Wikimedia Commons

日本人拘束騒動で話題になった平壌の外港「南浦」

 平壌の外港と呼ばれる北朝鮮の南浦が投資をしてくれる中国企業を渇望している。

 南浦は戦前から釜山、仁川と並ぶ朝鮮半島3大港として知られる港で、現在は、羅先とともに特別市となっている。

 首都平壌から西に60キロメートルくらいなので板門店、開城のような日帰り観光のスポットになっている。南浦が日本で話題となったのは、昨年8月に一時拘束された日本人S氏が南浦で拘束されたと報じられたことがあった(北朝鮮はS氏を拘束したのは南浦ではなく平壌空港だと主張しているが)。

平壌に近いが故に外貨が稼げない

 気軽な日帰り観光ができるが故に南浦は窮地に陥っている。

 北朝鮮は、各地方都市ごとに外貨を稼ぐ競争をしている。現在、南浦を訪れる外国人は、ほぼ全員が平壌から訪れるため日本人であれば「朝鮮国際旅行社(KITC)」が連れてくることになる。そのため、日帰りでも1泊しても外貨は平壌のKITCが獲得し、南浦には土産や追加の飲み物代くらいしか外貨が落ちず、ほとんどがKITCが持っていってしまうためだ。

 その結果、開発や整備するための資金が枯渇し、代表する観光地「西海閘門」も川底に土砂が堆積しこれまで通行できた大型貨物船やフェリーが通行できなくなっているため、浚渫(しゅんせつ)が必要なのだが、機材を調達する資金が不足しており実施できないという。

 また、市内で唯一の外国人が宿泊できるホテルがあるも老朽化により改装休業している。そのため現在、日帰りツアーか、宿泊するなら南浦の少し郊外にある「龍岡温湯院」になる。しかし、皮肉なことにこの施設は、2017年に新しく作られたので湯船も清潔で快適だと温泉好きの日本人観光客に好評になっている。

中国との国際航路再開を見越して動き出す

 国連制裁強化前まで、南浦は、中国の天津、大連とを結ぶ国際貨物船が定期運行されていた。海外から直接、南浦へ入国すると南浦の旅行会社が担当となり、南浦特別市へ外貨が落ちていたのであるが、現在、その貴重な収入源が閉ざされてしまっているというわけだ。

 そこで南浦特別市は、中国の大連や天津へ出向き国際航路再開を見据えた相談や大型旅客船を使った中国人向けの南蒲1泊2日ツアーへの投資説明会を行っている。

 説明会を聞いた天津の旅行会社によると、

 「100人以上が乗船できる客室付き大型旅客船を使って午後に南浦へ到着し観光。ホテルは、外国人が泊まれる施設がないため夕方にフェリーへ戻って宿泊。翌日午前中に再び上陸して観光して午後に帰国するというプランの提案でした」(天津の旅行会社担当者)

(続く)

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