半減した中国の北朝鮮レストランは多少復活
北朝鮮レストラン(以下、北レス)にとって、2018年1月9日は、第1次デッドラインと言える日だったが、最終デッドラインが日々刻々と近づきつつある。最終デッドラインとは、2019年12月31日大晦日に迎える。
今年の大晦日までに北朝鮮は北朝鮮国外に派遣している全北朝鮮人労働者を帰国させなければならないからだ。全員完全帰国は、国連制裁(国際連合安全保障理事会決議第2397号)によるものだ。
中国には最盛期100店ほどあった北レスは、第1次デッドラインで半分以下に減り、その後、2018年春以降の中朝関係の改善でポツポツと営業再開する店が出るなどして現在は50店舗ほどがあるとみられる。
丹東・瀋陽は半分が生き残るも大連は壊滅
取材を進めてみると、全体的に半減というわけではなく、地域差があることが分かってくる。
たとえば、北朝鮮と隣接しており国際列車が毎日運行されている丹東では、最盛期の半分以上の7店の営業が確認できる(2019年9月上旬)。また、空路の直行便があり、さらに北京に次ぐ重要都市として北朝鮮領事館が置かれる瀋陽には西塔エリアに5店ほど確認(9月末)できるので瀋陽も半数が残っていることになる。
その一方、同じ遼寧省大連は、既存3店が閉店し、元々中国資本でオープンし、北朝鮮人スタッフのステージショーを楽しむ中華レストランというコンセプトだった「牡丹峰朝鮮演芸酒店」も8月上旬に北朝鮮スタッフが全員帰国し休店へ入っているような場所もある。
北朝鮮大使館がある北京は5店舗。上海は?
北朝鮮大使館がある北京は5店舗。上海は?
北朝鮮大使館がある北京は、「玉流館」の正式な支店とされる「玉流宮」など半分以上となる5店の営業が確認できる(6月末)。
対照的に、国際都市で観光客も多く利益を上げやすいと思われる上海は、「平壌高麗館」の1、2号店の2店と系列のカフェ1店の営業が確認できた(8月末)。 平壌高麗館は今年移転したようで、他店も同様に移転した可能性があり地元タクシー運転手も把握できていない。
こうしてみると、中国の北レス生存率は、北朝鮮との距離と北朝鮮大使館や領事館の存在と相関関係がありそうなことが分かる。
かつてオランダにもあった世界の北レス
このまま年内の米朝再交渉が不調に終わり、最終デッドラインを迎えてしまうと北レスは完全消滅の可能性が高い。以前、紹介したように北朝鮮と行き来しやすい丹東などは観光ビザでこっそりと働く北朝鮮人もいるかもしれないが、北朝鮮との往来が不便な場所は、存続は厳しくなりそうだ。
また、中国以外の国にも北レスは、最盛期30店ほどあった。多くが北朝鮮との親交があり、交易関係があった東南アジアやロシアなのだが、ヨーロッパで唯一、オランダにも北レスがあったことはあまり知られていない。世界の北レス編は、別の機会で。