日系不動産会社に問い合わせる在タイ韓国人たち
タイにいる日本人ビジネスマンたちは、日本人同士で仕事を回すケースが多い。同じ文化と言語を有するので、様々な条件の取り交わしを省略できるメリットがある。これは日本人に限らず、どの国の人々も同国人と仕事をした方がやりやすいことが事実なのは想像に難くない。近年、日本人以上に訪タイ者数が増えている韓国人も同様だが、日本人社会よりももっと顕著だ。韓国企業同士の取引はもちろん、韓国人は同国人が経営する飲食店やコミュニティーにしか顔を出さない傾向が強い。
しかし、一方で韓国人は同国人を信用していないのか、住まい探しに関しては韓国の不動産仲介業者を通さないようだ。ある日系不動産仲介業者が韓国人移住者のことをこう話した。
「在タイ韓国人は滞在期間が長くなる人ほどしたたかですね。不動産を選ぶときも、物件オーナーに直接交渉してできるだけ安く済まそうとしています。ときどき弊社にも韓国人が客のふりをして来ます。しかし、それは相場チェックや、内見で情報収集をしているのです。条件が合わなかったことにして、あとでこっそりオーナーに連絡して、直接交渉してしまいます」
バンコク最大手日系不動産が語る韓国人客の特徴
バンコクにある日本人経営の賃貸不動産仲介業者としては最大手とされる「ディアライフ」社は、韓国人移住者の需要を見込んで韓国人向けの部門を創設した。実際に同社でも韓国人の問い合わせが増えていたためだ。同社の韓国人担当者に話を伺う。
「バンコクにも韓国人社会が形成され、韓国人経営の不動産会社もあるにはあります。しかし、在タイ韓国人は日系仲介業者の方を好みますね。というのは、日系の方が誠実という点が大きな理由です」
韓国人は、住まいを探す際、家賃を払うくらいなら買った方がいいと考えるそうだ。そうなると、いくらタイとはいえ高額な買いものになる。韓国人の自営業者はしたたかな人が多いので不安があり、騙されたくないという思いから、日系の不動産会社に相談に来る。先のような自分でオーナーと交渉するのもまた自営業者にその傾向が強く、日系不動産会社に相談に来るのは韓国企業の駐在員が多い。
韓国人向けに物件購入部門を創設
韓国人向けに物件購入部門を創設
これまでディアライフ社は、賃貸物件の仲介を専門にしてきた。バンコクはここ数年、コンドミニアム(分譲マンション)の建設ラッシュで、大半が個人投資家に購入されている。多くの不動産会社も投資を煽る宣伝をしているのが現状だ。だが、実際に利益が出る物件というのは案外限られている。管理や入居率など投資家が負うリスクが実はかなり大きく、利益が出ない物件の方が多い。そういった問題点を憂慮した同社は、投資物件をあまり扱ってこなかった。しかし、韓国人の問い合わせが増加していることもあり、物件購入を前提とした韓国人向け部門を創設した。
国家レベルでは日本と韓国の関係はあまりよくない状況ではあるが、韓国人個人レベルでは日本人のまじめな性格を理解し、頼ってくれているようである。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在に至るまでバンコクで過ごしている。
『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』近著『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
@NatureNENEAM