ストックホルムで米朝実務者協議が開催。米朝両国のそれぞれの評価

ストックホルムで米朝実務者協議が開催。米朝両国のそれぞれの評価

声明を発表する金明吉首席代表 出典 『ワシントン・ポスト

ストックホルムで米朝実務者協議が開催。米朝両国のそれぞれの評価

 10月5日、スウェーデンのストックホルムで約7か月ぶりに非核化をめぐる米朝の実務者協議が行われた。米国側はビーガン北朝鮮担当特別代表が、北朝鮮側からは金明吉(キム・ミョンギル)首席代表が出席し、協議は8時間半におよんだ。

 今年2月のハノイ会談以降停滞していた米朝交渉が進展するかもしれないという期待が寄せられた今回の協議だが、結果はまたも「物別れ」となった。

 協議終了後、金明吉首席代表は、「米国は柔軟なアプローチと新しい方法による解決策を示唆し、期待感を膨らませていたが、何も(具体策を)持ってこず、我々を大きく失望させ、協議の意欲をなくさせた」と米国の姿勢を非難した。協議を「決裂した」と評価したのだ。

 これに対し、米国務省側は、「(協議の)内容を反映していない。北朝鮮側とよい議論を行った」と反論した。2週間以内に協議を再開するというスウェーデン政府の提案に同意したとも発表している。

 このように今回の実務者協議について、米朝で異なる評価を下している。

北朝鮮外務省が明かした協議の実態

 北朝鮮外務省は6日に報道官談話を発表し、今回の協議について説明している。

 今回、協議にいたった経緯として、「米国側が『新しい方法』と『創意的な解決策』に基づいた対話に準備ができているという信号を送って協商(協議)の開催をしつこく要請してきた」と明かした。「米国側が正しい思考と行動を示すものとの期待と楽観を持って協議に臨んだ」と意欲を持って協議のテーブルに着いたとした。

 だが、このような経緯の下で協議にいたったはずなのに、米国側は「自らの従来の立場に固執し、何の打算や保証もなしに連続的かつ集中的な協商が必要だという漠然とした主張を繰り返した」と非難している。

 また、米国側が協議後に「(協議の)内容を反映していない。北朝鮮側とよい議論を行った」とコメントを出したことについては、「世論をミスリードしている」と指摘。

 米国側が「米朝協議を2週間後に行う」としていることについては、「(今年6月30日の)板門店会談から99日が経過した今日まで何も考えることができなかった彼らが、2週間という期間内に我々の期待と全世界的関心に応じる代案を持ってくるわけがない」として、再協議に消極的な姿勢を示した。

 そして、米国が従来の姿勢を転換しない限り協議に応じることはないとし、「朝米対話の運命は米国の態度にかかっており、その期限は今年末までである」と警告した。

 さらに、北朝鮮外務省は10日に発表した報道官談話の中で、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中断見直しもあり得ることを示唆した。

 この談話は、欧州6か国が北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験に対して非難声明を出したことに反発したものである。

 米国も同日に大陸間弾道ミサイル「ミニットマン3」の試験発射を行ったが、これを問題視せず、北朝鮮のSLBM発射だけを非難したことを指摘している。

 北朝鮮が望むのは米国による体制保証である。大国である米国が許されて、北朝鮮が許されないということがあれば、この体制保証と遠ざかっていると感じているかもしれない。
 
 北朝鮮は、「今年末まで」と期限を設け対米交渉打ち切りの可能性を示している。米国はこれにどのように応じるのだろうか。

八島 有佑

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