ベトナム人の同僚に借りたスマホでこっそり人生初のユーチューブ体験
東欧の海外労働者だった北朝鮮人女性が一発で脱北を決心したキッカケ(1/2)の続き。
Kさんは、平壌でも友人たちと隠れてK-POPを聞いていたので、国外の音楽はこんな感じだろうとはイメージしていたそうだが、初めてのクラブの音楽は、頭が破壊されそうになったと笑う。
このクラブ体験からせっかく国外にいるのだからもっとチャレンジしてみたいと思うようになり、ある日、ベトナム人の同僚からこっそり朝鮮語で入力できるように設定してもらったスマートフォンを一晩借りて、音と光がもれないように布団をかぶって操作をすることに。
生まれて初めて「ユーチューブ」へアクセスした。
一夜にして北朝鮮の価値観が崩壊。ユーチューブで脱北を決意
閲覧履歴からずらずらとお勧め映像が並ぶも何のことやらわからないので、とりあず検索ボックスに「김정은(金正恩)」と入力してみた。
すると、無数の動画がヒットしてKさんは仰天した。
「今まで神さまのような存在だと思っていた人の映像がユーチューブでこんな簡単に出てきたことに驚きました」(Kさん)
Kさんは、このまま早朝までユーチューブを見続けたという。
ユーチューブによってKさんは、北朝鮮で受けてきた20年以上の教育が一夜にして崩壊し、脱北する決意を固めた。
Kさんは慎重に周りにバレないように計画を進めて2015年秋にドイツ経由で韓国へ脱北に成功した。
ユーチューブの光と影。その秘めたる破壊力を熟知している中国
ユーチューブの光と影。その秘めたる破壊力を熟知している中国
現在、ユーチューブへのアクセス自体を規制している国としては、中国などが知られている。宗教や文化などの関係で一部を規制したり、タイやブラジルのようにユーチューブと不適切動画の削除をめぐり一時的に全禁止した国は多くあるが、常時遮断しているのは、中国くらいだろうか。
同じ社会主義国のキューバは、個人宅向けの通信回線ではアクセスできないが、街中の有料Wi-Fiならアクセスはできるらしいので完全遮断とは言えないようだ。ベトナムは、問題なく閲覧できる。
ユーチューブの功罪は、しばしば議論となる。確かにいい面と悪い面の両方を合わせ持つのは事実だろう。
悪い面は、制作ハードルの低さと拡散力の高さからフェイクニュースやヘイトクライムなどに悪用されたりする。いい面というか、秘めたる力としては、20数年間の価値観を一発で破壊してしまう、とてつもない力もあることだ。その秘めたる力の怖さを知っているから中国は、政府が意図するままに制御できるように中国企業に類似サイトを作らせてユーチューブを遮断し続ける。理由はまさにここにあるのだろう。もっとも、北朝鮮では、ユーチューブどころか、インターネット自体が開放されること自体が遠い未来となりそうだが。