今、自分の人生を生きているから幸せ

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工場作業のイメージ

今、自分の人生を生きているから幸せ

 北朝鮮レストランも含めた北朝鮮国外で働く北朝鮮人労働者たちの状況を聞くと興味深い内容を知ることができる。

 これは20代の脱北者女性の話である。彼女は、170センチ近いモデル体型の美人で、現在ソウルに暮らしている。今の生活はどうかと尋ねると、

 「自分自身の人生を生きているので幸せです」と笑顔で即答してくれた。しかし、両親は平壌に残したままなので複雑な思いもあるに違いない。

 平壌出身で中流家庭というKさんは、友人から国外で働く女性を探していると斡旋する業者の紹介してもらった。面接、出身成分などの確認を経て、10か月ほどで国外労働が決定した。斡旋業者は常に信頼できる人間からの紹介で海外労働者となる人材を集めているそうだ。

他の外国人労働者は敵対勢力と指導される

 Kさんは調理学校出身ということで料理関係の仕事を希望していたが、派遣されたのは東欧の衣類工場。工場には、中国人とベトナム人労働者も勤務していた。

 休憩時間などに中国人やベトナム人と接触する時間はあるが、班長(北朝鮮管理者)から、こう言われていたという。

 「彼ら(中国人やベトナム人)は、共和国の体制打破を目論んでいるから絶対に会話はしないように」

 工場労働が始まった当初、Kさんはある中国人から最高指導者を小馬鹿にするような発言を受け、心底、頭にきて、怒り狂ったかのように反論した。班長が言っていた通りだと思ったそうだ。

 毎日の就労後には反省会が実施され、それぞれが報告をしたり、個別に指導を受けた。この繰り返しが北朝鮮国外にいながらも何ら体制に対して疑問に感じさせない仕組みなんだとKさんは振り返る。

現地クラブで初めて耳にした音楽

現地クラブで初めて耳にした音楽

人生初クラブ音楽に衝撃を受けるKさん(東欧のクラブ施設・イメージ)

 当初の受けた説明よりはるかに少ない金額を報酬として受け取ったが、北朝鮮より物価が高い東欧で生活必需品を買うと使い切ってしまうので、家族へ渡すために節約に努めた。送金は、関係者が帰国するときに預けて渡してもらうようになっていた。周りの同僚たちも皆それぞれ節約して家族へ送っていた。

 月に1、2日は休日があったが、買い物など外出するのときも互いに監視しながら常に集団で行動する必要があり、個人行動はできなかった。

 ある日、現地案内人と行動をともにする北朝鮮人3人で示し合わせて、ルール違反だった現地のクラブへ行ったことがある。

 そこで耳にした音は、今まで聞いたことない音楽というか騒音としか思えないほどの衝撃を受けた。

 Kさんは、平壌でも仲間内でこっそりと韓国の音楽、いわゆるK-POPを聞いていたそうで、韓国の音楽や文化を通じて韓国風の発音に憧れをも抱いていた。

(続く)

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