先に「韓国人ですか?」と聞かれるタイ
タイは日本以上に韓国企業の進出や韓国製品が浸透している。そのため、観光客だけでなく、企業駐在員も少なくない。訪タイ日本人数と同じくらいの韓国人がタイに来ている。
一般的なタイ人は韓国人と日本人の区別がほとんどつかない。韓国製品以上にいわゆるK-POPや韓流ドラマがメディアを賑わせているので、北方のアジア人というと多くのタイ人にとっては韓国人が代表になりつつある。事実、2000年代初頭はどこに行っても日本人は日本人として見られるだけでなく、韓国人も日本人だと思われていたほどだったが、近年は色白のアジア人を見るとほとんどのタイ人がまず「韓国人ですか?」と聞くようになっている。
こう聞くと、タイ人は韓国人が好きのように映るが、どうも現実は違うのかもしれない。というのは、一部のタイ人から韓国人の悪口が出ており、その言葉は大概「見た目が似ている日本人の方がいい人種だ」といった内容で結ばれる。韓国人の悪口は筆者を始めとした日本人に対するリップサービスであるとも考えられるが、それにしては同じような意見を方々で耳にするのだ。
韓国人はタイ人を見下していると感じる人も
タクシー運転手や飲食店に勤める、直接韓国人を接客する人は「韓国人はタイ人を見下している」と感じられるとして、韓国人が嫌いだと発言する人が少なくない。(あくまでも筆者の印象だが)韓国語はタイ人には、ややきつく聞こえること、女性も比較的声が低い、それから男性は兵役があるからか体格がしっかりしていることもあって、小柄なタイ人には怖く見える可能性もある。
筆者が目撃したのは、20代と見られる若い男女のグループだ。男性3人は女性を甲斐甲斐しく面倒を見ている感じで、女性はそれが当たり前のように振る舞っていた。ある商業施設の前は大渋滞で、女性陣は施設の中の涼しいベンチで待ち、男性は通りに出て必死にタクシーと交渉する。バンコクは乗車拒否が多いのでやっと1台のタクシーを捕まえるが、そのあとに女性を呼びに戻ったため、待っていられないタクシーは罵声を浴びせて走り去っていった。
その後、女性らからも小言を言われていた男性陣には同情するが、まるで命令するかのような口調でタクシーを待たせようとしたので、運転手は、そのあたりにも嫌気がさしたのかと見られる。韓国は上下関係が非常にシビアであるとは聞くが、それをそのままタイに持ち込めば嫌われてしまうのは当然だ。
小さなことの積み重なりが嫌韓になっている?
K-POP人気が相変わらず強く、スマートフォンも韓国ブランドが注目され、韓国料理も好まれるので、こういったタイ人の韓国人嫌いはあくまでも些細なもの、一部の話であるが、ときどき、そういったタイ人の愚痴からタイ人の親日感情が垣間見られるようになった。
高田 胤臣
タイ在住ライター。2002年から現在に至るまでバンコクで過ごしている。
近書『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(共書)、『バンコクアソビ』、『ベトナム裏の歩き方』
2019年9月25日発売の新書で『亜細亜熱帯怪談』(監修)丸山ゴンザレス
@NatureNENEAM